分からないことをウダウダと悩んだところで、答えなど出るはずもなかったことに私は苦笑いを浮かべた。私が悩むべきことは、どちらの世界が現実かとか、私とフリューゲルが姉弟だったとか、そんな事じゃなくて、どうやって下界での学びを終わらせて、天界の庭園(ガーデン)に戻るのかということなのに。

「青島くん。あの。ありがとう。話を聞いてくれて。青島くんが言うように、どっちが現実かなんて分かりようがないもんね。分かっていることは、今、私たちがここにいるってことで、つまりは、それが全てなんだよね」
「おう。俺はそう思う」

 ニカリと笑った青島くんに、私も納得の意を示す。しかし、頷いた私の顔を青島くんは不思議そうに覗き込んできた。

「なんか、納得してないような顔だな」
「え? そんなことないよ」

 私は、首を振ったけれど、青島くんは私の顔から視線を外さない。

「突然泣いてしまう程の白野の悩みは、本当に解決したのか?」
「えっと……あの……」

 この世界と雲の上の世界の繋がりについて、考えても仕方がないことは理解した。でも、それでも気になっていることがあるのも、また事実だった。

「さっき、確か現実の世界かどうかは、《《さわり》》って言ってなかったか? つまり、他にも気になっていることがあるんだろ?」

 青島くんは、私の顔をじっと見つめたまま問いかけてきた。彼の深い青のような緑のような瞳に見つめられているうちに、私は、自然と口を開いていた。

「あのね。私、弟がいたかもしれないの」
「いるじゃなくて、いたかもしれない? それって、どういうことだ?」

 私が曖昧な言い方をしたばかりに、青島くんは、よく分からないというように眉を顰めた。

「えっと……私も今まで知らなかったことなんだけど、今日お母さんに聞いたの。実は、私は生まれる前に双子だったんだって」
「双子? え? でも……」
「うん。私は一人っ子。双子のもう一人は、生まれることが出来なかったんだって」
「そう、なのか」
「うん。お母さんの話では、私たちとても仲が良かったんだって。それなのに、私、全然そんなこと覚えていなくて……」

 私は言葉を詰まらせる。部屋に残してきたフリューゲルのことを思うと、また鼻の奥がツンとした。本当にフリューゲルが私の弟なのだろうか。また混乱の渦に囚われそうになる私の隣で、フライドポテトを摘まんでいた青島くんは、こともなげにサラリと言葉を発した。

「ってかさ、そんなの、みんなそうじゃね?」
「え?」