本日開花するであろう蕾は、(わたくし)Noel(ノエル)たちが見守る中、規則正しい明滅を繰り返していました。

 しかし、鈴の音と共に聞こえたあの言葉の直後、開花予定の蕾のすぐ隣、芽吹いてまだ間もないはずの小さな蕾が急激に成長を始めたのです。

 次第に大きくなっていく蕾を、(わたくし)たちは固唾を飲んで見守ります。

 急激な成長を始めた蕾の隣では、開花予定の蕾がいつ花が開いてもいいほどに早く細かく明滅を繰り返しています。しかし、まるで隣の蕾の成長を待っているかのように、明滅を繰り返すばかりで一向に花を開こうとはしません。

 急激に成長した蕾は先に明滅を始めた蕾と同じ大きさにまで膨らむと、隣の蕾とタイミングを合わせるかのように早く細かい明滅を始めました。

 もう、どちらの蕾も開花間近となっています。

 このような出来事は一度も経験のないことですが、どちらの蕾が花開こうとも開花儀礼であることには違いありません。

 (わたくし)たちは、無事に開花が終わることを祈りました。

 やがて、開花の瞬間が訪れました。

 リンという涼やかな音を1つずつ響かせて、一日に1つだけ花を咲かせるはずの大樹に、2つの花が咲きました。

 そして、花からはそれぞれ赤ん坊の姿をしたNoel(ノエル)が誕生したのです。

 Noel(ノエル)が赤ん坊の姿で誕生することは、稀にあります。しかし、子供や成人の姿で誕生することが常のため、大変珍しいことです。

 しかしながら、それ以上に重大なことは、同じ日に二人のNoel(ノエル)が誕生したということです。

 これ以上の庭園(ガーデン)を騒がせる出来事は、これから先、しばらくの間はきっと起こらないことでしょう。