「神様?」
「あっ……いや、何でもない。神様なんているわけないよな。何言ってるんだ、俺は」

 私の問いかけに、青島くんは慌てたように笑う。

 そんな彼に、私は言いたかった。神様は、いるよって。

 でも、そんなことを言っても、信じてはもらえないんだろうな。それに、私を護ってくださったのは、たぶん神様じゃない。

 だって、私は神様と面識がないもの。そんな者を助けてくれる程、神様がお暇だとは思えない。

 倒れる直前に見た白い羽。あれはきっと、神様ではなく司祭様だ。司祭様が私を助けてくださったのだろう。司祭様が下界へいらしているとしたら、フリューゲルは、たぶん司祭様と一緒だ。久しぶりに会えたのに、いろんな話ができなかったことが心残りではあるけれど、これからは、話したいときにはいつでも話せると言っていたし、フリューゲルには、またすぐにでも会えるだろう。

 そう思い、自分の気持ちを無理やり安心させたとき、青島くんが不思議そうに聞いてきた。

「それにしても、白野は、なんであんな木材が積んである車の傍に居たんだ? 危ないだろ」
「えっと、……花を、見てたの」
「花?」
「そう。あの空き地に、ベルみたいな形をした白い花がたくさん咲いてるの」
「それって、風が吹いたら、鈴の音がしそうなやつか?」

 私は少し驚いて、彼の顔を見た。

「そう、そうなの! もしかして、あの花のこと知ってるの?」
「いや、……あの空き地に花が咲いてたなんて、知らなかったよ」
「じゃあ、なんで……?」
「ベル型の白い花って言ったら、《《すずらん》》かなぁと思って」

 青島くんは、私の問いかけに当然のように答えた。

「すずらん?」
「でも、他にも、ドウダンツツジとか、スノーホワイトとか……あとは……そうだなぁ、ホワイトエン……」

 なんだこの人は? どうやら、植物の名前をいろいろ言っているみたいだけれど、何故こんなに詳しいのだろう。植物博士なのか?

「あ、あのっ!」

 私は、思わず大きな声を出してしまった。私の声に、青島くんはキョトンとした顔をしている。

「あ、あの。もしかして、植物に詳しいの?」
「いや、別に詳しいって程じゃないけど。うちのじいちゃんが、そういうの好きでさ。たまに、手伝ったりしてるから、覚えちゃったんだよな」
「おじいさん?」
「そう。植物が好きすぎて、森林保護の活動だかなんだかにも、たまに参加してるぜ。ホント良くやるよ」

 青島くんは、信じられないという感じで、呆れたように言っている。