こんなに近くにいることは、『普通』のことなのだろうか。
肩越しに彼の顔をぼんやりと眺めていると、暗めの青なのか緑なのか分からないけれど、なんだか落ち着く色のあの瞳と視線が重なった。彼はパっと視線を逸らす。そして、顔を隠すように俯きながら口を開いた。
「でも、良かったよ。白野の怪我が大したことなさそうで」
「あ、……はい」
私は、まだ彼を見つめたまま、曖昧に相槌を打った。
「学校へ行く途中でもの凄い音がしたから、びっくりして……」
「学校?」
聞き慣れた単語に、思わず彼の言葉を遮ってしまった。よく見ると、彼は私と同じ学校の制服を着ていた。胸ポケットに付いている学年ごとに色分けされた校章は、私の校章と同じ色だ。
「あの? もしかして、私のこと知ってるの?」
「ん? ……あぁ」
彼は、私を支えていない方の手で、鼻の頭をポリポリと掻く。
「『白野つばさ』だろ。俺のことは……知らないか。俺は、青島大海っていうんだ」
「青島大海……くん?」
青島くんの名前を口に出して言ってみると、これが初めてではない気がした。前にもどこかで、この名前を口にしたことがあるような気がする。でも、どこでだったか全然思い出せない。学校で言葉を交わしただろうか? 毎日が目まぐるし過ぎて、忘れてしまったのかもしれない。
忘れるといえば、フリューゲルのことをすっかり忘れていた。
不意にフリューゲルのことを思い出した私は、慌てて周りを見回してみた。けれど、フリューゲルの姿は近くにはない。
Noelであるフリューゲルが、下界の人に見えないことは分かっている。しかし、一応確認してみる。
「あの……青島くん。私のそばに誰かいなかった?」
「誰かって? 一緒にいた奴がいるのか?」
青島くんは、先ほどの情景を思い出そうとするかのように、目を瞑って黙っていたが、しばらくすると、首を横に振った。
「俺が駆け付けた時には、白野が倒れているだけで、誰もいなかったと思う」
「そっか。そうだよね」
当たり前だ。きっと、青島くんには見えなかったのだ。フリューゲルは近くにいたはずなのだけど。
一体、フリューゲルはどこへ行ってしまったのだろう。
フリューゲルの行方を気にする私の横で、青島くんは、先ほどのことを思い出したのか、話が止まらなくなっていた。
「でも、本当に無事で良かったよ。あんなにたくさんの木材が落ちていたのに、頭に当たらなかったなんて、奇跡かもな。神様が白野を護ってくれたのかもな」
肩越しに彼の顔をぼんやりと眺めていると、暗めの青なのか緑なのか分からないけれど、なんだか落ち着く色のあの瞳と視線が重なった。彼はパっと視線を逸らす。そして、顔を隠すように俯きながら口を開いた。
「でも、良かったよ。白野の怪我が大したことなさそうで」
「あ、……はい」
私は、まだ彼を見つめたまま、曖昧に相槌を打った。
「学校へ行く途中でもの凄い音がしたから、びっくりして……」
「学校?」
聞き慣れた単語に、思わず彼の言葉を遮ってしまった。よく見ると、彼は私と同じ学校の制服を着ていた。胸ポケットに付いている学年ごとに色分けされた校章は、私の校章と同じ色だ。
「あの? もしかして、私のこと知ってるの?」
「ん? ……あぁ」
彼は、私を支えていない方の手で、鼻の頭をポリポリと掻く。
「『白野つばさ』だろ。俺のことは……知らないか。俺は、青島大海っていうんだ」
「青島大海……くん?」
青島くんの名前を口に出して言ってみると、これが初めてではない気がした。前にもどこかで、この名前を口にしたことがあるような気がする。でも、どこでだったか全然思い出せない。学校で言葉を交わしただろうか? 毎日が目まぐるし過ぎて、忘れてしまったのかもしれない。
忘れるといえば、フリューゲルのことをすっかり忘れていた。
不意にフリューゲルのことを思い出した私は、慌てて周りを見回してみた。けれど、フリューゲルの姿は近くにはない。
Noelであるフリューゲルが、下界の人に見えないことは分かっている。しかし、一応確認してみる。
「あの……青島くん。私のそばに誰かいなかった?」
「誰かって? 一緒にいた奴がいるのか?」
青島くんは、先ほどの情景を思い出そうとするかのように、目を瞑って黙っていたが、しばらくすると、首を横に振った。
「俺が駆け付けた時には、白野が倒れているだけで、誰もいなかったと思う」
「そっか。そうだよね」
当たり前だ。きっと、青島くんには見えなかったのだ。フリューゲルは近くにいたはずなのだけど。
一体、フリューゲルはどこへ行ってしまったのだろう。
フリューゲルの行方を気にする私の横で、青島くんは、先ほどのことを思い出したのか、話が止まらなくなっていた。
「でも、本当に無事で良かったよ。あんなにたくさんの木材が落ちていたのに、頭に当たらなかったなんて、奇跡かもな。神様が白野を護ってくれたのかもな」



