「アーラのせいじゃないよ。僕が神さまに望んで、それを神様と大樹様(リン・カ・ネーション)が受け入れてくれたんだから。きっと、僕が天使になるためには、アーラと庭園(ガーデン)で過ごす日々も必要なことだったんだ。それが分かっていたから、大樹様(リン・カ・ネーション)は自身のお力を使ってでもアーラを庭園に迎えてくれたんだよ」
「そうかしら?」
「うん。僕はそう思ってる。僕が守護天使になると決めたのは、きみのそばを離れたくないからだもの。そう思えるのは、やっぱり庭園(ガーデン)での日々があったからだからさ。アーラが庭園にいたことは、必然だったんだと思う。きみが気に病むことは何もないさ」
「……そうだといいな。私も、フリューゲルといつも一緒にいられて楽しかったもの。そうね。もう気にするのは止めにするわ。私をここまで育んでくれた大樹様(リン・カ・ネーション)にも、司祭様にも失礼な気がするし」

 私達は互いに笑みを交わす。こうして話していることさえ、近いうちに忘れてしまうのだと思うと、とても寂しい。それでも、私は塞ぎこんだりしたくない。今しかできないフリューゲルとの交流を、心の底から楽しみたい。アーラという存在が消えてしまっても、フリューゲルは絶対に覚えていてくれる。彼の中に残るアーラが寂しいものにならないように。悔いの遺した顔を彼の中に刻みつけないように。私はいつだって笑っていたい。

 心配事をまた一つ吹っ切り口元を緩めていると、心配そうにフリューゲルが顔を覗き込んできた。

大樹様(リン・カ・ネーション)のことは、心配しなくても大丈夫。僕はまだきみの守護天使以外のお役目は頂いていないけれど、司祭様にお願いをして、これからは司祭様とともに僕も大樹様(リン・カ・ネーション)のお世話をさせてい頂くことにしたから。といっても、基本的には大樹様(リン・カ・ネーション)はご自身のお力で大きくおなりだから、僕たちは見守ることくらいしかできないみたいだけどね。でも、もし万が一、今回みたいに、大樹様(リン・カ・ネーション)に何かあった時は、僕が全力でお世話することを約束するよ」

 フリューゲルの言葉に安堵し頷くと、彼は、「だから」と言葉をつなげる。

「僕のためにも、学びをやめるなんて言わないでよ」
「……どういうこと?」
「僕は、きみのそばでもっと人の気持ちも植物の気持ちも知りたいんだ。アーラだって、本当はもう園芸の虜なんだろ? 知ってるよ。きみがいつも泥だらけになりながらも、常に口元が緩んでいること」

 そう言って、フリューゲルはいたずらそうな笑みを浮かべた。やっぱり双子の片割れは、私のことをよく分かっている。