次の水曜日、私は響のスケジュール帳に書かれていた遊園地の観覧車へ行ってみた。
ちょうど水曜日は、ヘルパーの須田さんが来てくれる日だったので、私は安心して出かけられた。行った所で何もわかる事はないと思っていたが、ただ何となく観覧車に乗れば、響がどんな気持ちだったか少しでもわかるかもしれないと考えたのだ。
私の住んでいる町から一駅のこの遊園地は、海沿いの高台にあり、夏は下の海水浴場でも遊べるので大勢の家族で賑わいをみせるが、まだ寒い春先のこの時期は、春休みだというのに人もまばらで閑散としていた。
特に時刻はもう夕方四時を過ぎていて、閉園が近く、観覧車に乗っている人は誰もいなかった。
特に理由はないが、響のスケジュール帳を見ると、大体水曜日の夕方四時過ぎに観覧車で待ち合わせをしているみたいだったので、同じ様に時間を合わせてみた。
観覧車はピンクや青、緑に黄色とパレットを垂らしたようなカラフルな塗装が塗られているが、老朽化が進んでいて所々、錆びて燻んでいた。暇そうに立っている係員のお爺さんに、響の持っていた観覧車の回数券を一枚渡すと、お爺さんは無言で受け取って、観覧車の扉を開いた。
私が観覧車に乗り込むと、お爺さんが錆びた古い金属が擦れる、大きな音を立てて、扉の鍵を閉めた。この観覧車に乗るのは初めてだった。
ゆっくりとただ確実に観覧車は動いて上に登っていた。
私は少しずつ変わりゆく外の景色を眺めていた。海には夕陽が落ちていき、一日の終わりを告げていた。海に浮かぶ小さな島には鳥居が見えて、あの島にはウミネコと言う鳥が沢山止まる事から"ウミネコ島"と呼ばれていた。
響はこの観覧車に乗って誰と、この暮れ行く夕陽を眺めていたのだろうか?
一人で乗っていても、当たり前だがなにも楽しくもないし、何かわかる事も気づく事もなかった。
いつも大人の様な振る舞いをしていた響にも、嫌になるような現実があったに違いない。
しかし、私にはそんな弱音を吐けないだけだったのだろうか?
そう思うと、胸の奥がきゅっと閉まる思いがして少しの苦しさを感じた。
響がいないと、私はやっていけないよ、、、。
響が死んでから、何回ともわからない程心の中で呟いた。響に依存していたのは、母だけではなく私も同じだったのかもしれない。
ちょうど水曜日は、ヘルパーの須田さんが来てくれる日だったので、私は安心して出かけられた。行った所で何もわかる事はないと思っていたが、ただ何となく観覧車に乗れば、響がどんな気持ちだったか少しでもわかるかもしれないと考えたのだ。
私の住んでいる町から一駅のこの遊園地は、海沿いの高台にあり、夏は下の海水浴場でも遊べるので大勢の家族で賑わいをみせるが、まだ寒い春先のこの時期は、春休みだというのに人もまばらで閑散としていた。
特に時刻はもう夕方四時を過ぎていて、閉園が近く、観覧車に乗っている人は誰もいなかった。
特に理由はないが、響のスケジュール帳を見ると、大体水曜日の夕方四時過ぎに観覧車で待ち合わせをしているみたいだったので、同じ様に時間を合わせてみた。
観覧車はピンクや青、緑に黄色とパレットを垂らしたようなカラフルな塗装が塗られているが、老朽化が進んでいて所々、錆びて燻んでいた。暇そうに立っている係員のお爺さんに、響の持っていた観覧車の回数券を一枚渡すと、お爺さんは無言で受け取って、観覧車の扉を開いた。
私が観覧車に乗り込むと、お爺さんが錆びた古い金属が擦れる、大きな音を立てて、扉の鍵を閉めた。この観覧車に乗るのは初めてだった。
ゆっくりとただ確実に観覧車は動いて上に登っていた。
私は少しずつ変わりゆく外の景色を眺めていた。海には夕陽が落ちていき、一日の終わりを告げていた。海に浮かぶ小さな島には鳥居が見えて、あの島にはウミネコと言う鳥が沢山止まる事から"ウミネコ島"と呼ばれていた。
響はこの観覧車に乗って誰と、この暮れ行く夕陽を眺めていたのだろうか?
一人で乗っていても、当たり前だがなにも楽しくもないし、何かわかる事も気づく事もなかった。
いつも大人の様な振る舞いをしていた響にも、嫌になるような現実があったに違いない。
しかし、私にはそんな弱音を吐けないだけだったのだろうか?
そう思うと、胸の奥がきゅっと閉まる思いがして少しの苦しさを感じた。
響がいないと、私はやっていけないよ、、、。
響が死んでから、何回ともわからない程心の中で呟いた。響に依存していたのは、母だけではなく私も同じだったのかもしれない。



