透明なトライアングル

 ふっと、頭上を鳥が横切って、地面に影を写した。

 その瞬間、また全ての音が戻ってきた気がした。

  「えっ、、、、?」

伊織の意外過ぎる言葉に、私は返す言葉もなくただ、伊織を見つめていた、、、。


  『俺は詩歌が好きだよ』


冗談で言っているのだろうか?だとしたら、こんな空気でそんな冗談を言うのはかなりタチが悪いと言える。

 「何だよ、その顔。人が告白してるのに、何か言う事ないの?」

「告白なの?」

「違うの?」

伊織は、私を恨んでいるんじゃないの?恨んでいるのに好きってどう言う事だろう?
頭の中がハテナマークでよくわからなくなっていた。

 「待って?私知ってるんだよ?伊織があの観覧車で響とデートしてた事。響は、伊織の事が好きだったんだよ?」

伊織は私の言葉に意外そうな顔をしていた。

 「え?そうなの?」

「知らなかったの?伊織は響の事どう思ってたの?」

 「どうって、友達、、、?って言えるのか?」

私が質問責めをすると、伊織が少し頭を掻いて私に言った。

 「ちょっと座ろうぜ、長くなるから」

 私達は、海沿いのコンクリートに並んで腰をかけた。今日は風が強く、伊織の髪も風で靡いていた。

 「初めてあの観覧車で会った時、どうして嘘ついたの?響の事知らないなんて、嘘だったんでしょ?」

「そうだなぁ、、、響と約束してたから。詩歌には俺達が会ってる事は内緒にしようって」

「それは、私のせいで伊織のお父さんが亡くなった事が、私にばれないように?」

「そう。詩歌は気が強いけど、凄く傷つきやすいから、自分のせいで誰かが命を落としたなんて知ったら、凄くショックをうけるだろうって」

 響らしい。響はいつもそうやって私が傷つかないように、私の事を守っていた。

 「初めは、俺から響に近づいたんだよ。親父があの海岸で溺れてる詩歌を見つけて、真っ先に助けに行って、何とか詩歌に浮き輪を被らせて近くにいた大人に手渡した時、親父は一瞬で離岸流に流された。いくら訓練を積んでいる人間でも、離岸流に逆らう事は不可能だ」

あのウミネコ島辺りは、海流の影響で特に離岸流が発生しやすいと言っていた。
特にお盆の辺りはよく発生して、毎年水難事故が絶えなかった。

 「親父は、そのまま沖に流されて死体があがってくる事はなかった。別に詩歌のせいじゃない。詩歌を助けようと思って海に飛び込んだのは、親父が判断して、親父が選んだことだ」

「でも、、、」

それでも、責任を感じずにはいられない。現に、私は今命を助けてもらって生きていて、伊織のお父さんは死んでしまっているんだから、、、。