透明なトライアングル

 「詩歌は夢が小さ過ぎるよ。こんな夢ならいくらでも付き合ってやるよ。だから、もっと大きい夢を描けよ」

私に取ったら、富士山を見に行く事はかなり大きい夢だったが、伊織に言わせればちっぽけな夢らしい。けれどここへ来れた事は、私にとったらかなり意味のある大きな一歩だった。

 「でも、絶対に一人では来る事がなかったと思うよ。伊織とこれた事に意味があるんだよ」

 恋とか愛とか、同級生が夢中になるそんな物は私にはよくわからなかった。けれどキラキラと太陽の光が反射して光る美しい湖を眺めながら、大きな伸びをする伊織の事が私はとても大切だった。

 伊織は、私が暗闇に飲み込まれそうな時に私の手を引っ張って明るい場所へ連れてきてくれた。どうして私にこんなに優しくしてくれるのか、私にはわからなかった、、、。

 『伊織君、詩歌の事好きなんじゃないのかなぁって』

恵那の言っていた言葉を思い出す。

伊織の好きな人は誰なんだろう、、、。

気になってはいたけれど、私は伊織に絶対にこんな質問は怖くて出来ないと思っていた。

 「詩歌!ボート乗ろうぜ!」

伊織が湖に浮かんでいる手漕ぎボートを指差して言ってきた。

 「いいけど、、、絶対に揺らしたりしないでね?」

「ああ、水恐怖症だっけ?大丈夫だよ!俺はボート漕ぐのプロだから」

伊織はドヤ顔で言ったが、信じた私が馬鹿だった、、、。



 「きゃー!!ちょっとやめてよ!揺らさないでよ!落ちるでしょうが!」

「うるせーな!落ちねーよこんなんじゃ!」

ボートは意外に漕ぐのが大変だし、伊織がふざけて揺らすので余計に腹がたった。

 「やっぱりダメだわ。水系は無理!怖過ぎる」

「ボートは水系に入らないだろ?お前良かったな東北に住んでて、プールの授業ないもんな」

 それは、本当に良かったと思っていた。きっと水泳の授業があったとしても、全部見学にしてもらうくらいに、私は水が苦手だった。

 あの海で溺れた日、私はすぐに病院に連れて行かれて、気がつくと病院のベッドで眠っていた。目を覚ますと、響とお母さんが私に泣きながら抱きついてきたのを思い出す。

 ニ人は「良かった、、、良かった、、、」と口々に言っていたが、その後ろの病室の廊下では、何か物々しい雰囲気で、スタッフが忙しそうにしていた。

 私はその様子が気になって、廊下の方を見ていたが、看護師の一人が誰かに足早に通り過ぎる時に言っていた、、、。

 『リガンリュウ、、、』

上手く聞き取れなかったがそんな事を言っていた。

 リガンリュウ、、、。

それって一体、、、。