透明なトライアングル

 私達はバスを降りると、東京の人混みと、風景に圧倒されていた。

「伊織!駅から物凄い人が溢れてくるよ?本気であの中に入ってくの?大丈夫かな」

「入らなきゃ電車乗れないだろうが、目的は東京じゃなくて、富士山なんだから」

伊織の言う通りだけど、こんなに大きな駅も、人混みも初めての事で緊張していた。
特急の電車が来るまでに時間があったので、私達は駅の中に入っているカフェで朝食を食べた。

 「伊織、なんか都会の味がする!」

「本当だ!、、、なわけないだろ!ただのサンドイッチだよ!」

 「てかさ?私達、今日平日でしょ?補導とかされたりしないのかな?」

私が少し心配になって伊織に聞くと、伊織は何も気にしていない感じだった。

 「大丈夫だろ?私服だし。何か聞かれたら大学生で通せばいけるだろ?」

「大学生〜?私達見えるかな?」

「見えなく、なくなくなくなくもない」

伊織がどっちつかずの事を言うので、笑ってしまった。私は通勤ラッシュの足早に通り過ぎる人を眺めながら、今頃母は、私がいなくなった事に気がついているのだろうかと考えた。
 私は携帯の電源を切っていたので、母から連絡がきてもわからなかった。伊織の母親は、朝方に帰ってくるだろうから、どうせ二、三日会わなくても気づかないだろうと言っていた。

 私達は特急電車に飛び乗ると、富士五湖を目指した。電車の中ではニ人で、トランプをして遊んだ。罰ゲームはデコピンにして、伊織が痛いデコピンの仕方を、携帯で調べたので、ニ人で痛みに耐えながら負けられない戦いを繰り広げた。

 とにかく楽しかった。伊織といると、私はすっかり詩歌として素の自分でいられた。不安がないと言ったら嘘になるけれど、私は伊織といると全てが何とかなる気がしていた。

 特急電車に乗ると、ニ時間弱で私達は目的の河口湖に着く事が出来た。
 私は生まれて初めて見る富士山のその大きさに圧倒された。

 「すっご────い!!これが日本一の富士山!?こんなに大きいの!?」

今日は運が良かったのか、富士山の裾野の方までくっきりと見えていた。
 大き過ぎて、まるで自分に迫り来るような迫力を感じたが、その迫力の中にも美しい曲線を描く優雅さがあって、何とも言えなかった。
 とにかく、こんな景色は地元では見る事が出来ない、唯一無二を感じた。

 「感動した?」伊織が嬉しそうに私に聞いてきたので、私は大きく頷いた。

 「感動した!だって日本で一番大きいんだよ?凄くない!?ポストカードを見てるみたいだよね?」

 綺麗な湖と富士山は、テレビなどでよく見る光景だったので、現実の景色ではないように感じた。私は少し伸びをして、伊織の方へ向いた。

「伊織、ありがとう。私の夢を叶えてくれて」