透明なトライアングル

 気がつけば、わたし達は先生ニ人に力ずくで体育館の外に出されて、保健室に連れていかれていた。

 私達は、顎やら肘やら擦りむいていたし、小池さんの顔には私の引っ掻いた傷があった。
 保健室には消毒薬の匂いが漂い、何故か気分が落ち着いていき、処置をされてからやっと、ニ人の興奮が治り、その後はニ人共黙っていた。

 生徒指導の先生が、保健室にきて私達に言った。

 「今、ニ人とも保護者に連絡して来てもらうように言ったから、時期迎えがくるから今日は家に帰って頭を冷やせ」

 その言葉に、私は声が出せなくなってしまった、、、。

 母にこんな大きな喧嘩をした事がバレてしまった、、、。きっと物凄く心配して、不安になっているだろう。

 私は心臓がどきどきと、次第に大きな音に変わっていくのを感じていた。
 手が小さく震え出していた、、、。

 こんな事にならないように、今まで必死に頑張ってきたのに、結局また心配をかけてしまう。
母の今の心の状態で、こんな事受け止められるのだろうか?

 とにかく不安だった。自分が、しでかした事なのに、激しい後悔と自責の念で胸が張り裂けそうだった。

 母が来るまで、私は永遠に時間が止まってしまったような気分だった。ただ、震える手を必死に隠そうと、力を込めて手を握っていた。

 慌てた足音が廊下から聞こえて、青い顔をして先に保健室に入って来たのは、小池さんの母親だった。見るからに仕事が出来そうなスーツに身を包み。気が強そうな雰囲気の母親だった。

 小池さんの母親は、小池さんの顔の傷をみて一瞬で頭に血が昇ったらしく怒りだした。
 
 「酷い!どう言う事!?娘の顔にこんな傷をつけて!!どうしてくれるのよ!あなたがやったの!?」

小池さんの母親の剣幕に、私は驚いていたが、小池さん自身も少し慌てていた。先生が間に入って宥めていたが、小池さんの母親の怒りはなかなか治らず、私は小さな声で「すみませんでした、、、」と謝った。

 私が悪いんだろうか?何を言われても私が黙っていればそれで良かったんだろうか?私が今までされてきた事、言われてきた事は、この顔につけた薄い傷でチャラになるような事なのだろうか、、、。

 「まだ、ニ人からの詳しい事情が全く聞けていないんで、どうしてこうなったか、わかっていないんですよ?今日はニ人とも興奮しているので、後日落ち着いてから詳しい話しを聞こうかと、、、」

 「何言ってるの!この傷を見ればどちらが悪いかなんて、分かりきった事じゃない!痕に残ったら、責任とれるの!?女の子なのよ!」

小池さんの母親の激しい怒りで、その場の雰囲気はすぐに解散とはならない方向になっていた。
私はそれを何処か冷静な思いで眺めていた。

 顔の傷の責任を私がとるのであれば、私の心の傷の責任は一体誰がとってくれるのだろうか?

 その時、パタパタと廊下をスリッパで走る足音が聞こえて、母が姿を現した───、、、。