透明なトライアングル

 その後も、カットインしてアンナにボールをパスすると、アンナが綺麗なシュートを決めてくれた。絶対に負けたくなかった。散々言われっぱなしで、許せるはずがなかった。

 小池さん達は、私がこんなにバスケをやれると思っていなかったらしく、悔しそうな表情を浮かべていた。アンナがリバウンドから、ボールを奪うと、私にパスを送り次々と、シュートを決めていった。

 息が上がって、苦しかったが、気持ちが良かった。色々な事がどうでもよくなって、ただリングにボールをいれる事だけに集中していた。

 小池さんが、段々焦りと、私に対する怒りから粗いプレーが目立つようになり、ファールをするようになった。思わず私が睨みつけると、小池さんが私に聞こえるような小さな声で言った。

 「ほら、それが本性でしょ?いい子ぶりっ子してたのは、死んだお姉さんになりたかったから?」

「はぁ?」

私は思わず鋭い視線を小池さんに投げつけた。
私が双子で、その姉が死んだ事を同じ中学の子から聞いたのだろう。叩くのには面白いネタだが、聞き流せなかった。

 「無理しない方がいいんじゃない?あんたはいくらぶりっ子してもお姉さんにはなれないって。
頭も良くて、しっかり者で、優しくて?そんな人間にあんたみたいな、キレやすい問題児がなれるわけないから。わかってんでしょ?」


『響?あなたがいてくれて、お母さん本当に良かった』


「まあ、あんたの姉も大人しいふりして他校の男をナンパするようなビッチだったらしいけど」

何かが頭の奥で弾ける音がした。心の中に渦巻いていた、ドス黒い感情が我慢の限界でどくどく溢れ出していた。

 響の事を馬鹿にされるのは、どんな理由でも許せはしなかった。

 頭に熱い血が昇って行く感覚がして、それを自分自身が止める事ができなかった。

 "制御不能"コンピューターのエラーサインが出たようだった。

 響の振りをした私は終了。上手くはいきませんでした、、、。

 自分の頭の中で呟くと、私は手にしたボールを小池さんに重いっきり投げつけて、掴みかかっていた。

 一瞬だった。胸にボールが当たって、苦しそうに顔を歪めた小池さんだったが、その事で怒りが爆発したのか大きな声で「ふざけんなよ!」
と私に怒鳴ると、ニ人で掴み合いの喧嘩になっていた。

 教師が慌てて間に入り私達を止めたが、興奮していた私達は、先生の声など耳に入るはずもなかった。周りの生徒達も、驚いて私達を遠巻きにみていたが、そんな事はどうでも良かった。