透明なトライアングル

 「次!BチームとCチーム!」

先生が声をかけると、私は立ち上がった。
私はBチームで、小池さん達はCチームで女バスの子が多かった。

 けれど、私は完全に怒りで周りが見えなくなっていた。いくら響になろうと、必死に大人しくしていた私であっても、我慢するのも限界だった、、、。

 別にバスケでなら、この子達をボコボコにしても構わないはずだ。私と同じチームには人数合わせでアンナが入った。女バスでも一番上手かったアンナが、バスケ経験のない子が多い私達のチームの助っ人として入ってくれた。

 小池さん達はにやにやと私を見ながら、まだくだらない陰口を言っているようだったが、これだけ本人にわかるように言うのなら、私に直接言えばいいのにと思っていた。

 そんな事をしたら、大事になるから影で言って楽しんでいるんだろうけど、、、。

 先生が、笛を吹いたのを合図に試合が始まった。最初は小池さんがボールを持っていた。
女バスのキャプテンをやっていた事もあり、確かにドリブルをする姿は様になっていて、手慣れていた。


 『響、吹奏楽部に入りなさいよ』


急に、私の頭に母の声が聞こえた気がした。
 
 『あなたのフルートが聞けるから、毎日お母さん頑張れたのよ』


違う、違う、、、私は吹奏楽部なんかに入りたくない、、、。

 私は小池さんがパスを出そうとした相手に反応して、そのままパスカットをしてボールを奪った。そのままドライブでディフェンスを交わし、何百回と練習したスリーポイントシュートを決めた。

 「流石、詩歌!全然鈍ってないじゃん!」

アンナが私に声をかけてくれて、同じチームの子も「凄い!」と言ってくれた。
 中学一年で、唯一レギュラーを取れた私は嬉しくて仕方なかったが、母が試合を見にきてくれた事はなかった。
 母は元々、音楽が好きでスポーツにはとても疎かった。だからバスケなんて物に、興味がいっさいなかったんだろう。

 それでも、私は一度でいいから、母に試合を見にきて欲しかった。