透明なトライアングル

 「ねぇ、詩歌?今私がこんな事聞くのもあれだけどさ?本当に伊織君とは何でもないの?」

「何でもないよ。本当にただの友達。皆んなが疑っているような事はないよ。伊織は、自分のせいで私がこんな目にあってるって思ってるから、私に気を使ってるんだよ」

それ以外にも、お互いの家庭の事情の事もあったが、私はそれは恵那には話さなかった。
とにかく、私達は同志のような関係で、それ以上の事はなかった。

 「私は何となくさ、伊織君の事を好きな女子達の勘が結構当たっているんじゃないかと思ってさ」

「どう言う事?」

 「伊織君、詩歌の事好きなんじゃないのかなぁって」

恵那に意外な事を言われて少しどきっとしたが、全くピンとはこなかった。伊織は、他の女子とも仲がいいし、私に特別優しいとは感じた事はなかった。
 
 「そんな事はないと思うけど?」

「伊織君、最初に会った時から詩歌にだけ自分から話しかけに言ってたよね?今もクラスでの詩歌の様子をよく見て、詩歌が辛そうな場面では、詩歌に話しかけたり、かなり気を使ってる気がする。皆んなそれをわかってるから余計に悔しいんだよ」

誰かを好きになるとか、誰かと付き合うとか、自分には全く関係のない世界で生きてきたからだろうか、私は恋と言うものがさっぱりわからなかった。

 「そうなの?私、好きな人とかいた事なくて、よくわからないんだよね?」

「だよね?詩歌がずっと一番好きだったのは、響だったもんね。友達も、恋人も、響がいればそれでいいって感じだったもん」

恵那にまで、シスコンがばれていたとは思わなかったが、確かに恵那の言う通り、私は響がいればそれで良かったのかもしれない。

 「だから、伊織君と上手くいくならそれで良かったなって思ってたの。皆んなには内緒だけどね?殺されるから!」

私は思わず笑ってしまった。流石に殺されたりはしないと思うが、確かに伊織の事を好きな女子はそのくらいに熱狂的なのかもしれない。

 「響がいなくなって、詩歌に新しく大切な人ができたらいいなぁって思ってさ。
 伊織君が詩歌に送る視線は絶対に恋の視線だよ!」

それがどんな視線なんだか私にはわからなかったが、今私にとって伊織がとても大切な人に変わりはなかった。初めは苦手で嫌いなタイプだと思っていたけれど、私は伊織に沢山救われていた。
 その後も恵那と少し図書室で話したが、あまりニ人で話している所を見られるのは良くないと思って、私は先に家に帰った。
 恵那が私に悪いと思ってくれていた。私はそれだけで、心の中が少し軽くなるような気分になっていた。