透明なトライアングル

 『詩歌、もし私が凄く好きな人が出来たら必ず詩歌に紹介するね。だって詩歌が気に入らない男なら、いい男ではない気がするからさ』

『何それ?私、別に良い男を嗅ぎ分けられる能力とかないけど』

『そんな事ないって、詩歌は昔から何処か本質を見極める能力があったじゃない?戦隊モノの中の人が変わっても気づいたし、大好きなチョコのお菓子の生産地が変わってもすぐにわかったでしょ?』

 『だからと言って、響の彼氏が悪い人じゃないとかは、わからないよ?それは全く別物の話しじゃない?』

『それでもいいから、とにかく会わせるから、でも詩歌も好きになったらどうしよう?ありえなくもないよね?』

『その時は、私が諦めるよ。響と恋のライバルとか、絶対に勝ち目がないし、戦いたくもないよ』

同じ容姿なのに、髪型や性格、醸し出す雰囲気で響は昔からよくモテていたが、私はさっぱりモテる事などなかった。

 私は例え響と同じ人を好きになったとしても、響の好きな物を奪いたいとは思わないだろう。
 響は、私にとって好きな男の子よりも大切な存在だから、、、。

 ふと目が覚めた。気づけば朝六時だった。
カーテンを開けてみると、今日は曇り空のようで、水分をたっぷりと含んだ雲が今にも雨を降らせそうだった。

 頭に鈍い鈍痛がして、思わずこめかみを押さえた。久しぶりに夢に響が出てきて、嬉しい反面、切なさを感じていた。私は机の上に置いてそのままにしていた響のスケジュール帳をもう一度開いてみた。

 『彼は、今日も一緒に観覧車に乗って私の話しを聞いて、笑い飛ばしてくれた。そうすると、私の気は楽になって、小さな事がどうでもよくなってくる。私達の事を憎んでいるのだろうか?聞きたいが今日も聞く事ができなかった』

私達を憎むとはなんだろう?
"達"というくらいだから、もう1人の誰かがいるはずだ、、、。

私は、響のスケジュール帳を見ながら考えていたが、やっぱり響が誰と会っていたのかは、わからなかった。

 私が自分の部屋から下へ降りると、キッチンからいい香りがしていた。

 「響、おはよう。朝ごはん出来てるわよ」

母がエプロンを着て、キッチンに立ちながら私に声をかけてきた。私はその姿に少し驚いて動揺したが、テーブルに置かれた朝食を見て「美味しそう」と声に出した。

 「久しぶりに、パンを焼いてみたのよ。焼きたてだからフワフワで美味しいと思うわよ。昔からこのチーズパン大好きだったもんね」

母は楽しそうに私に言うが、このチーズパンが大好物だったのは"響"だった。最近、落ち込みぎみだった母が朝から起きて豪華な朝食を作っている事が、私を不安な気持ちにさせていた。
 これは、いい状態なのだろうか?躁になってるだけではないか?私はついつい疑いの目を向けて心配してしまうが、母は私の前に大量のチーズパンを置いていった。