透明なトライアングル

 演奏が終わったあと、私達は控え室に行って、部員達に軽く感想を聞いたりしていた。
伊織は本当にモテるようで、吹奏楽部の子から何故か逆に花束をもらっていた。
 どうやら、伊織の出身中学の女子の間では伊織は皆んなの伊織だから、一人占めしないように協定が組まれていたらしい。だから、いくら好きでも告白は抜け駆けだからしてはいけない決まりになっていたみたいだ。

 そんな伊織に、高校から一緒になったぽっとでの私が近づいたから皆んな気にいらないようだった。

 けれど、好きなのに告白出来ないなんて変な話しだ。女子とは時によくわからないルールで自分の首を絞めているのかもしれない。

 「詩歌、久しぶり!」

私が伊織と帰ろうとした時、急に他校の制服を着た女子から話しかけられた。

 「あれ?美菜子(みなこ)久しぶりだね」

美菜子は同じ中学だった友達で、会うのは中学の卒業以来だった。他校の制服を着ていたから、美菜子と気づくまで時間がかかった。

 「久しぶり!演奏会聞きにきてたんだ。ちょっとびっくりしちゃった、一瞬響がいるのかと思って、、、」

美菜子はそう言って少し寂しそうな顔をした。
美菜子は響と一番仲の良かった子だった。毎年命日のお墓参りには欠かさずきてくれていたし、響のお葬式の時に一番泣いていた生徒も、美菜子だった。

 私はそこで、ちょっと思いついた事があって、美菜子に尋ねてみた。

 「ねぇ、美菜子、響から好きな人の話し聞いた事ある?」

私は、あのスケジュール帳の事が気になっていた。響が観覧車で会っていた人物は一体誰なのか?仲の良かった美菜子なら知っているかもしれない。

 「響の好きな人?う〜ん。あんまりよく聞いた事はなかったけど、なんか誰かいるのかなぁとは思ってた」

「どうして?何か相談うけてた?」

「そういうわけじゃないけどさ、中学に入ってから、響、何故か水曜日になるとちょっとおしゃれしてたんだよ」

私は美菜子の言葉にぴんときた。水曜日は響が観覧車に乗っていた曜日だ、、、。誰かとデートをするから、おしゃれをしていたのだろうか?

 「おしゃれっていっても、色付きリップを塗るとか、その程度の事だけどね。私も気になって聞いた事があるんだよ『好きな人でもいるの?』って」

私は何故かドキドキしていた。私の知らない響の姿を内緒で見ている感覚だった。

 「そしたら、気になっている人がいるって。その人には何でも隠せずに話せるし、会うと元気になるって、でも何となくだけど、同じ中学ではなかった気がする」

 それは意外だった、同じ中学以外の人に出会うなんて、そんな機会は殆どない気がしていた。毎日学校と家の往復で、どうやって学校以外の人間と知り合うのだろうか。