透明なトライアングル

 そんな悲しい、学校生活をしばらく送っていると、伊織と広報活動をする日がやってきた。

 「吹奏楽部の定期演奏会の取材だって」

私達は土曜日の学校が休みの日に、わざわざ隣り町の公会堂にいた。

 「広報ってこんな面倒なんだな。わざわざ休みの日まで駆り出されるなんて、しかもノーギャラで」

「当たり前でしょ?学校の委員会なんだから!ほら、カメラでいい感じに撮らないと、校内新聞にのせるんだから」

私達は、カメラを構えながら緊張した面持ちで現れた吹奏楽部の子達を撮影していった。

 伊織が、カメラで撮影しながら私に話しかけてきた。

 「なぁ、大丈夫なの?」

 「大丈夫じゃないって!ちゃんと指揮者まで入ってる?」

「うるせーな!入ってるよ!カメラの話しじゃねーよ!」

 「じゃあ何?」

伊織が少し気を使いながら、カメラで撮影しながら言ってきた。

 「最近、あからさまに女子から省かれてない?心配してんだよ」

男子からみても、小池さん達の私へのはぶりは、わかりやすいようだった。伊織は自分のせいで私がこんな目にあっていると思っているのか、責任を感じているみたいだった。
 
 「そうだね。かなり孤立してるよね。でも、まあ仕方ないよね。ちょっとした事でいきなり一人ぼっちになるんだよ」

「俺が小池に言ってやろうか?くだらない事するなよって」

「いいから!余計にややっこしい事になるから!絶対に何もしないで」

私がきつく言うと、それでも伊織はあんまり納得していないようだった。伊織が私の肩をもつような事をしたら、また反感を買うのは目に見えてわかっていた。

 吹奏楽部の演奏が始まった。大きな音がホールに反響して、迫力が凄かった。何度か響の演奏を母と一緒に見に行った事があった。
一年生ながら、響はフルートのソロパートをもらって一生懸命に練習をしていた。
 母はそんな響の演奏を嬉しそうに見つめて聞いていた。もし、響が今も生きていたら、このホールで演奏していたのだろうか?

 いくらしっかり者で、人より大人っぽい響でも、皆んなと同じように、こんな風に緊張した面持ちでフルートを吹いていたのだろうか。
 私は吹奏楽部の演奏を聞きながら、胸がぎゅっと痛んだ。

 切なかった。響はもっと生きて、こんな舞台に立ちたかったはずだ。そう思うと、何とも言えないやりきれない気持ちになっていた。