透明なトライアングル

 伊織が私の前を去って行ったあと、私はしばらく一人で呼吸を整えていた。

 "大丈夫、大丈夫、、、"

自分で言い聞かせていると、少し気持ちが落ち着いてきたので、教室に戻ろうと歩き出したその時、、、ドンっと女子生徒とぶつかった。その時、相手が持っていたノートが床に落ちてしまった。

 「ごめんなさい!!」私がすぐに謝ると、ぶつかった相手は、私の顔を見て少し驚いていた。

 「あれ?一城さんじゃない?」

私の名前を知っているその人は、身長がかなり高く、みた事のある顔だった。

 「え〜っと、、、」

「覚えてない?私は西中で女バスだった、末永(すえなが) アンナ!よく練習試合したじゃん?ちゃんと話した事はなかったけど、、、」

そう言われて思い出した。さっき恵那が言っていた女バスの子だ、、、。

 「わかる!中学の時から凄く背が大きくてバスケが上手かったから覚えてるよ」

 「私も覚えてるよ、、、一城さん、かなりバスケ上手くて全然勝てなかったから、何処からでもスリー決めて憧れてた。
 でもあの時とだいぶ、、、」

末永さんの言いたい事はすぐにわかった。バスケをしていた頃の私は、髪の毛もボブというか、ショートヘアに近かったし、性格もすぐにかっとなるタイプだった。
 今の雰囲気からは、だいぶかけ離れていると思う。

 「バスケ辞めて、髪の毛伸ばしたんだ。それで印象違うんでしょ?」

「う〜ん、、、それもあるけど、前はもっと言いたい事は何でも言う!勝ち気というか、猪突猛進と言うか、猪みたいっていうか、、、」

「そんなだった?流石に言い過ぎじゃない?」

私は昔、そんな風に他人に思われていたのかと思うと、少し恐ろしくなってきた。昔の私は、余りにも負けず嫌いが過ぎていた。
 今の響の真似をしているくらいがちょうどいいのかもしれない。

 「だって、納得いかないファールとかあると、三年とか関係なく噛み付いてたよね?マジで凄いと思ってたよ」

言われてみれば、思い当たる節が沢山あった。

 「かなりやばい奴だね、それは」

 「でも、私は結構憧れてたけどね。バスケ辞めちゃったんだって?事情があるのかもしれないけど、少し寂しいなぁ、、、。休み時間とかでいいから、たまに相手してよ」

私を無理に部活に誘うでもなく、遊びでバスケに誘ってくれる気遣いに、少し嬉しくなった。

 「うん。私でよければ、相手になるかわからないけどね」