透明なトライアングル

 何とか自分に"落ち着け"と唱えた。こんな事は、前にも何回かあった。その度に寿命が縮まる思いがしたが、母は何でもなかった。
 ただ、今の気持ちを私にわかって欲しいからこんなメッセージを送っているだけだ、、、。
 けれど、もしもの可能性だってある。

 自分の心の中で色々な感情がうごめいていた。まるで母に脅迫されている気分だった。
私が職員室に行って事情を話しに行こうとしたその時、須田さんから折り返しの電話がきた。

 『詩歌ちゃん?電話した?ごめんね、運転中で出られなくて』

その声が、神様のように聞こえた。私が慌てて事情を話すと、須田さんは落ち着いた声で対応してくれた。

 『わかったわ。今事務所に連絡して、私は直ぐに詩歌ちゃんの家に向かうから。落ち着いてね、今詩歌ちゃんの家の直ぐ近くだから、お母さんの様子がわかったらメッセージに入れるから心配しないで」

それだけ言うと、須田さんは直ぐに電話を切った。私はその瞬間、ふと力が抜けた気がした。
まだ母の様子はわからないが、とりあえず須田さんが直ぐに向かってくれるので、安心した。

 私が廊下で一人うな垂れていると、伊織が私の側にきた。

 「何してんだよ、こんな所で。具合でも悪いの?」
 
 私が真っ青な顔をして携帯を握りしめていたので、伊織がびっくりして声をかけてきた。

 「伊織、、、。お母さんが、、、」

私は思わず伊織に事情を話そうとしていた。

 「お母さん?何かあったのか?」

その時、私の携帯にメッセージが入った。慌ててみると、須田さんからだった。

 『お母さんは、無事だから心配しないで。詩歌ちゃんが家に帰るまで、私がついています』

そのメッセージを見たあとも、私は怖くて手が震えていた。けれど、こんな事でわざわざ須田さんに連絡をして迷惑をかけてしまった事に罪悪感を抱いた。
 あんなメッセージ、過剰に心配する事じゃないのに、私はいつも冷静になれずパニックになってしまう。

 「詩歌?どうした?」

私はハッとして、伊織の顔を見ると、伊織が心配そうに私の顔を覗きこんでいた。

 「、、、ごめん。何でもない。大丈夫だった」

私は何とか、まだ早く打ちつける鼓動を抑えながら言った。

 「そう、、、。何かあるなら言えよ?」

伊織がそう言った時、後ろから声がした。

 「伊織〜!早くこっちきて!高梨が面白い動画見つけたって!」

小池さんが伊織を呼んでいた。

 「え?今ちょっと、、、」と伊織が言った所で私は伊織の脛を思いっきり蹴った。

 「いって!!何すんだよ!」伊織が私に怒って言ってきたが、私はすぐに伊織に小声で話した。

 「面倒な事になるから、早く行って!私は大丈夫だから!」

 この間小池さんに、伊織とは何でもないと言ったのに、こんな風に伊織と一緒にいる所を見られた事が罰が悪かった。

 「気にしすぎじゃね?」と言いながら、伊織は渋々小池さんの方へ歩いて行ったが、小池さんが私の方に冷たい視線を送っている事に気がついていた。