「何だよ、わけわかんないやつだな」
「そうだね。じゃあ、伊織にこれあげるよ」
私はさっき買ったばかりのプリンの1つを差し出した。
「何でプリン?」
「食べると少し気持ちが落ち着く気がするから」
こんなプリンを食べたからと言って、今の気持ちが変わるわけはない。自分ではどうしようもない事ばかりに押し潰されそうになって、身動き出来なくてもがいているのは、自分だけではないという事実に、少しだけ救われた気がした。
だから、伊織に何かささやかなプレゼントをしたくなったんだ。
「伊織も、学校での無駄に明るいキャラは演技なんじゃないの?」
「まあ、その方が楽なんだよな。馬鹿みたいな事言って、騒いで、くだらねーなって思いながら過ごしてると、ちょっと家の事忘れられるんだよ」
そう言う伊織は、学校でいる時とは正反対に一人ぼっちで寂しそうに見えた。
その時、私達の頭上を飛行機が物凄い速さで爆音を放ちながら飛んで行った。
自衛隊の飛行機だろうか。訓練か任務かわからないが、海の方へあっという間に姿を消していってしまった。
「いいなぁ、、、。こんな暗闇を飛行機で飛んでいくってどんな気分なんだろうな」
「普通、こんな真っ暗じゃなくて天気の良い、晴れた青空の中を飛びたいって思うもんじゃないの?」
「そうかなぁ、俺は周りが見えないくらいの暗闇の中を飛んでみたいって思うんだけど」
「なんも見えないじゃん?」
「何か見えるかもしれないだろ?俺の父親、自衛隊の輸送機のパイロットだったんだよ。昔は憧れたなぁ。ヒーローだと思ってた」
ヒーローか、、、。伊織にとってのヒーローはもうこの世にいなくなってしまったのか。
「私のヒーローも、この世にもういないんだ」
「ヒーロー?」
「私の双子の姉、死んじゃったから。ヒーローをなくしても生きていかなきゃならないのは辛いね」
響の笑顔が頭に浮かんだ。響は辛い時にはいつも私を助けてくれた。こんなプリンなんかじゃ補えくらいに、響と話すだけで気持ちが楽になっていた。
「でも、生きなきゃしょうがないからな。詩歌が悲しい時には俺の所にこいよ。一緒に泣いてやるから」
「なんで?」
「誰かと一緒に笑いたいわけじゃないんだよ。俺は誰かと一緒に泣きたいんだよ」
伊織が言いたい事は何となくわかる気がする。
私が今一番欲しいのは、辛い時にただ一緒に泣いてくれる誰かかもしれない。
さっき、リビングで一人、孤独を感じながらプリンを食べていた時とは、今は気分が全然違う気がした。
その時、私の携帯が鳴った。
「お母さん?ごめんね。大丈夫だよ、もう帰る」
私が電話を切ると、伊織が私の方を見つめた。
「随分心配症だな。俺の母親なんて、子供ほったらかして毎晩飲み歩いてるぜ」
並びのスナックから、盛り上がる大人達の大声が聞こえた。
「どっちが幸せなんだろうね、、、。じゃあ、私は帰るね」
私はそう言ってまた自転車に跨った。これ以上は母が心配して、外に出歩いてきそうだった。
「詩歌!」
伊織が大きな声で私を呼び止めた。
「プリン、ありがとう!」
「また明日ね」私は手を振って、自転車を思い切りこいだ。
ふと見ると、真っ黒な海の上にはぽっかりと月が浮かんでいた。暗闇の中を飛行機で飛んでいたら、この明るい月が見えるのだろうか?
伊織が昼間ではなく、夜中に飛行機で飛んでみたいと言った気持ちが少しわかる気がした。
「そうだね。じゃあ、伊織にこれあげるよ」
私はさっき買ったばかりのプリンの1つを差し出した。
「何でプリン?」
「食べると少し気持ちが落ち着く気がするから」
こんなプリンを食べたからと言って、今の気持ちが変わるわけはない。自分ではどうしようもない事ばかりに押し潰されそうになって、身動き出来なくてもがいているのは、自分だけではないという事実に、少しだけ救われた気がした。
だから、伊織に何かささやかなプレゼントをしたくなったんだ。
「伊織も、学校での無駄に明るいキャラは演技なんじゃないの?」
「まあ、その方が楽なんだよな。馬鹿みたいな事言って、騒いで、くだらねーなって思いながら過ごしてると、ちょっと家の事忘れられるんだよ」
そう言う伊織は、学校でいる時とは正反対に一人ぼっちで寂しそうに見えた。
その時、私達の頭上を飛行機が物凄い速さで爆音を放ちながら飛んで行った。
自衛隊の飛行機だろうか。訓練か任務かわからないが、海の方へあっという間に姿を消していってしまった。
「いいなぁ、、、。こんな暗闇を飛行機で飛んでいくってどんな気分なんだろうな」
「普通、こんな真っ暗じゃなくて天気の良い、晴れた青空の中を飛びたいって思うもんじゃないの?」
「そうかなぁ、俺は周りが見えないくらいの暗闇の中を飛んでみたいって思うんだけど」
「なんも見えないじゃん?」
「何か見えるかもしれないだろ?俺の父親、自衛隊の輸送機のパイロットだったんだよ。昔は憧れたなぁ。ヒーローだと思ってた」
ヒーローか、、、。伊織にとってのヒーローはもうこの世にいなくなってしまったのか。
「私のヒーローも、この世にもういないんだ」
「ヒーロー?」
「私の双子の姉、死んじゃったから。ヒーローをなくしても生きていかなきゃならないのは辛いね」
響の笑顔が頭に浮かんだ。響は辛い時にはいつも私を助けてくれた。こんなプリンなんかじゃ補えくらいに、響と話すだけで気持ちが楽になっていた。
「でも、生きなきゃしょうがないからな。詩歌が悲しい時には俺の所にこいよ。一緒に泣いてやるから」
「なんで?」
「誰かと一緒に笑いたいわけじゃないんだよ。俺は誰かと一緒に泣きたいんだよ」
伊織が言いたい事は何となくわかる気がする。
私が今一番欲しいのは、辛い時にただ一緒に泣いてくれる誰かかもしれない。
さっき、リビングで一人、孤独を感じながらプリンを食べていた時とは、今は気分が全然違う気がした。
その時、私の携帯が鳴った。
「お母さん?ごめんね。大丈夫だよ、もう帰る」
私が電話を切ると、伊織が私の方を見つめた。
「随分心配症だな。俺の母親なんて、子供ほったらかして毎晩飲み歩いてるぜ」
並びのスナックから、盛り上がる大人達の大声が聞こえた。
「どっちが幸せなんだろうね、、、。じゃあ、私は帰るね」
私はそう言ってまた自転車に跨った。これ以上は母が心配して、外に出歩いてきそうだった。
「詩歌!」
伊織が大きな声で私を呼び止めた。
「プリン、ありがとう!」
「また明日ね」私は手を振って、自転車を思い切りこいだ。
ふと見ると、真っ黒な海の上にはぽっかりと月が浮かんでいた。暗闇の中を飛行機で飛んでいたら、この明るい月が見えるのだろうか?
伊織が昼間ではなく、夜中に飛行機で飛んでみたいと言った気持ちが少しわかる気がした。



