次の日も、雨が降ったりやんだりのぐずついた天気が続いた。

 母はあいかわらず調子が悪くて、あたしに「死にたい、殺して」と言い続ける。
 父は家に寄りつかない。
 母の世話と家事をしながら、あたしは学校に通っている。

 教室に入ると、いつも通りみんなに囲まれて、瀬戸くんが笑っていた。
 あたしはちらっとその顔を見ながら思う。
 なんだか瀬戸くんの笑顔って、作り物みたい。
 でもそれは、あたしが少しだけ瀬戸くんのことを知ってしまったからで、たぶん他の人は気づいていない。
 瀬戸くんはこのクラスで、いつも明るく悩みなんかない、陽気な男子というポジションなのだから。

 ぼんやりそんなことを考えていたら、瀬戸くんがこっちを見た。
 あたしは慌てて顔をそむける。

 窓の外では、また雨がぽつぽつと降り始めていた。