今日は待ちに待ったAトレインの翔くんプロデュースのカフェに行く日だった。
紗綾に貰った余りのチケットで誰か誘おうと思っていたのに、結局バタバタして誰も誘うことができず、ただの紙切れになってしまいそうだ。
そして今日は今岡レオとの授業がある日だ。
借りたノートを返さなければと少し早めに教室に入るとまだ誰も来ていないようだった。
席は自由なので、前に座った席にとりあえず腰を掛けた。
すると、ガラガラっと扉が開き今岡レオが入ってきた。
人気俳優と聞いたからだろうか、以前よりオーラがある気がした。
私と目が合うとよっと片手を上げて近づいてくる。
今岡レオも前と同じ席に腰を掛けてくれたので、私はそっと鞄から借りていたノートを取り出し、助かりました。ありがとうございました。と言って返した。
全然大丈夫だよ。役に立てたならよかった。とさわやかな笑顔で受け取る。
ノートの最後のページに書かれていた言葉が頭をよぎったが、仲良くもないのに突っ込める訳もなく、少しの気がかりだけが残った。
そういえば、お礼を買ってくるのを忘れていた。
まだ授業もあるし、売店でお菓子かジュースか買ってこようかなと考えていると、ふと蓮斗の言葉が思い浮かんだ。
今日のAトレインのカフェに思い切って誘ってみようかな…
そんなことを考えていると、今岡レオが突然、ミスコンでグランプリ獲った子だよね?と話しかけてきた。
私が、え、はい、そうですけど・・と思わぬ質問に恥ずかしそうに答えるとまだ名前言ってなかったなって思って。
今岡レオです。よろしくね!と笑顔で手を差し伸べてきた。
市川杏梨です。よろしくお願いします。
今時学生同士の自己紹介で握手するかなと思いながらも、差し出された手を握る。
すると向こうの体温が低いのか手が氷のように冷たかった。
思わず、え、冷たいと口から言葉がこぼれてしまった。
あ、ごめんごめん。俺めっちゃ冷え性なんだよとレオは照れ笑いを浮かべる。
なるほど、そうなんだと私も少し微笑んだ。
人がいない今がチャンスと思い、一か八かカフェに誘ってみることにした。
突然でびっくりされるかもしれないんですけど、今日Aトレインの翔くんプロデュースのカフェがプレオープンで、関係者のみのチケットがあるんですけど、今岡さんも一緒に行きませんか?
唐突すぎる誘いにびっくりしたのか、レオは吹き出し、え?俺?!と驚いた様子だ。
勿論二人きりではなくて、私の友人も二人行くんですけど。と私が伝えるとレオはうーんと少し考える仕草を見せ、一応俺俳優業やらせてもらっててAトレインのメンバーの涼太とは友達なんだけど...、翔くんがカフェをオープンするのは知らなかったなあ。涼太も来るのかな…と考えているようだ。
俳優やってること、知ってます!やっぱり忙しいですよね…と私が無理な誘いをしてしまったと思っていると。うーん、それって何時から?と思わぬ返事が帰ってきた。
この授業が終わってすぐ向かうから13時くらいかな。ちなみに私と同じサークルの子で男子と女子の二人が来るよ!と言うと、
次の日朝早い仕事あるから夜は厳しいけど、それなら行けるよ!俺あんま学校来てないから友達もいないし、紹介してくれる?とまさかの了承してくれたのだ。
もちろん。二人とも良い子だからきっと仲良くなれると思う。
え!楽しみ。こんな当日誘いにのっかるの初めてかも。とレオは笑った。
俺車で来てるからカフェまで車出すよ!となんとも神対応の提案までしてくれた。
え、ホントに?甘えちゃって良いの?
場所は表参道だから近いけど、すごくありがたい。
ん!全然問題ないよ。
ありがとう!
トントン拍子で話が進んだが、まさか来てくれるなんて。ダメ元で聞いてみるものだなぁ。
するとガラガラッと扉が開いた。
いつもの先生とは別の先生が入ってきたので、ふたりしてあれ?っと互いに顔を見合わせる。
君たち、赤坂先生の授業でしょ。今日教室変更になったのメールできてなかった?
早くしないと遅れちゃうよ!
そう言われふたりして慌ててスマホを確認する。本当だ!
だから誰も入ってこなかったのか。
急いで荷物をまとめて二人して急いで教室を出た。

授業が終わり、紗綾と蓮斗には今岡レオも一緒に行くことを事前に伝えた。ふたりとも心底驚いたようで、嬉しそうな反応だ。
門の前で今岡レオと並んで二人を待っていると、案の定痛いほど行き交う学生たちの視線を感じた。
変装もキャップを被るくらいで特にしていないし、スタイルも良いので立っているだけで目立つのだ。
するとお待たせーと紗綾と蓮斗がやってきた。
蓮斗は今岡レオの顔を見るなり、わー、本物だ。
やっぱり男前っすね。と相変わらず初対面からストレートにものを言う。
蓮斗と紗綾を軽く紹介し、今岡レオが車を停めている駐車場に向かった。
本来であれば教員しか使えない駐車場だから、特別に許可してもらっているのだろう。
車は外車のようで蓮斗は目を輝かせてかっこいいーと眺めていた。
車内では呼び方の話になり、同い年だしみんな下の名前で呼ぼうと意見が一致した。
するとレオとAトレインの涼太が友達と知った紗綾は、涼太くんとはどこで出会ったのだとか、好きなタイプはだとか一番の推しの情報を少しでも知りたい一心で、レオを質問責めにしていた。
きっとめんどくさいはずだろうに、嫌な顔ひとつせず質問のひとつひとつに丁寧に答えるレオを見て、いい人なんだろうなと感じた。
さ、着いたよー!
レオの運転で無事カフェに着いた。
表参道の大通りに面する立地にあり、見た目からも高級感が漂うカフェだった。
カフェの前には記者らしき人が何人もいてテレビ局も何社かきているようだった。
紗綾が先陣をきって、関係者入り口から中に通してもらうと、私達のような若者は一切おらず、仕事関係の人で溢れていた。
せっかくだからみんなで写真を撮ろうよと何枚か4人でカフェ内の写真を撮ったりしていると、レオのことを知っている関係者たちがなぜ今日きているのか取材をしようと話しかけてきた。
プライベートなんですと伝え、上手く記者を交わしつつ4人とも席に着き、カフェで提供予定のドリンクを飲みながら、紗綾はずっとそわそわしている。
こんな間近でAトレインを見れる機会になんて後にも先にもないかもしれないから、目に焼き付けないと。

関係者しかいないから悲鳴は絶対あげられないね。と紗綾に耳打ちすると、本当それな。私多分声出ちゃうと笑った。
レオと蓮斗は何やら学校の授業の話やらゲームの話をして盛り上がっているようだった。
すると司会者らしき女性が前に出てきて、皆様お待たせいたしました。今回はこちらのカフェをプロデュースしたAトレイン翔さんよりご挨拶がございます。あたたかい拍手でお迎えくださいとオープイングセレモニーが始まった。
みんな一斉に拍手する中で、かっこいい黒スーツに身を包んだ林田翔がステージ状に登壇した。
ライブに行ったときでもこんなに間近で見ることができなかったのに、今目の前にいることが信じられなかった。
紗綾と顔を見合せ最高すぎるね!とお互い興奮しているのがバレないよう必死に息を殺した。
えー、本日はお集まりいただきありがとうございます。
ずっと自分のカフェをオープンしたいと思っていたのでこうして夢を実現できたことを嬉しく思います。
今回は店内の内装はもちろん、フードやドリンクメニューまで考えさせていただき、無事今日という日を迎えることができました。
関係者の皆様には感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございます。と深々とお辞儀をした。
簡単な挨拶が終わり記者の質問タイムが始まった。
記者のこだわりのポイントはありますか。という質問には、店内の食器や家具、壁に飾られた絵はすべて僕がNYで買い付けに行ったので、楽しみながら見て欲しいです。と答えていた。
質問タイムが終わると、突然司会者が話し始めた。
こうして林田翔さんの自分のカフェをオープンするという夢を叶えられた日でもある本日、祝福したいとメンバーの方々が集まってくれたそうです。
どうぞお入りください。
すると奥からAトレインのメンバーが颯爽とステージ上に登壇した。
紗綾は推しの涼太の姿を見て、小さい声でやばいやばいと連呼している。
その様子を見て蓮斗とレオは苦笑しながらも楽しそうに様子を見ていた。
Aトレインは五人グループで結成されており、カフェをプロデュースした翔、グループのリーダーでありスタイルの良さからモデルでも活躍する涼太、俳優としても活躍している瞬、歌が一番上手い隼人、明るくてバラエティー番組に引っ張りだこの日向からなる5人組だ。
それぞれ得意分野があり、メンバー全員顔も整っているので、今勢いのあるアイドルグループの一つだ。
翔は皆がくることを知らなかったようで、びっくりして少し涙ぐんでいるようだった。メンバーから花束を貰いさらにうるうるとしているのを見て、私と紗綾もつられて泣きそうになってしまった。
色々と噂はあるがメンバー間の仲は良さそうに感じた。
また、メンバーへの質問タイムがいくつかありそれが終わるとそれでは本日はお集まりいただき、ありがとうございました。とメンバー皆が挨拶をしてイベントが終わった。
すると、涼太は会見中レオの存在に気付いたのかひとり客席に戻ってきた。
レオ!今日来てくれてたんだ。めっちゃ久しぶりじゃん。元気だった?
おぉ!元気だよ!涼太も元気そうで何より。
すると私達を見てこちらの方は…?という涼太にレオは同じ大学の友達で、とひとりずつ紹介をする。
紗綾は今まで見たことのないくらい顔を真っ赤にして照れているようで、その姿がとっても可愛らしかった。
私はどちらかというと箱推しなので、誰が特別好きって訳ではないから紗綾ほど緊張はしなかった。
よければさ、楽屋来なよ!レオの友達なら大歓迎だよ!
と涼太はこっちこっちと楽屋に案内してくれる。
楽屋にはメンバーがまだ残っていて皆ごはんを食べているようだった。
涼太はメンバーみんなにレオとレオの友達たちが見に来てくれたよと紹介してくれた。
Aトレインのメンバーが一斉に集まって、私達に挨拶をしてくれている光景を見て、私は夢の中にいるようだった。
ライブの遠くの席でしか見たことなかった彼らが、今半径1メートルくらいの距離にいることが信じられなかった。
紗綾を見ると、今にも倒れてしまうんではないかと思うくらい緊張し硬直していた。
この二人はAトレイン推してくれてるんだって!
と涼太が言うと、まじで?ちなみに誰推し?と日向が興味津々で聞いてきた。
私は涼太くんです!という紗綾に対して私は箱推しです!というと、なんだー箱推しと涼太かーと日向が不服そうに言った。
箱推しでもありがたいでしょ!いつもありがとう。
翔が日向をフォローするように笑顔で私に声をかける。

イベントでは出せなかったんだけど、ここのカフェで出すフードメニューが差し入れでたくさんあるから、よかったら食べて行ってよ!と翔の誘いもあり、大きな机を囲ってみんなでごはんを食べる流れになった。
ファンからしたら、明日死んでも悔いはないようなまさに夢のような時間だ。
緊張してかあまり喉を通らず、紗綾も同じだったようでごはんには全く手をつけていなかった。
すると紗綾が私に耳打ちをし、ねえ、もう一生会えないかも知れないから涼太くんに連絡先聞いても言いと思う?と私に聞いてきた。
私はすこし考え、まずはレオの連絡先を教えてもらってからレオから聞いたほうがいいんじゃないかな。ここじゃ気まずくなる気もするし。
そうだよね。困らせちゃうよね。
ファンと公言してしまった以上、これ以上踏み込んではいけないなという雰囲気を何となく察知した。
みんな一通り食べ終わるとじゃあ今日はお開きにしますかと翔が立ち上がり、今日はありがとうございましたと軽く挨拶を交わしてカフェを出た。

カフェを出るなり紗綾はほんっとーに、最高だったね。
生きててよかったーと今まで見たことないくらい幸せそうな顔をしている。
本当だよね。今日は誘ってくれてありがとう!
レオも当日の誘いなのに、運転までしてくれてありがとうと私が言うと、こちらこそだよ!
大学で友達作れてよかったー!もっと早く知り合いたかったと笑った。
大学生活も残り七ヶ月くらいしかないけどさ、これからもよろしくねとみんなに微笑んだ。
するとせっかくだから、連絡先交換しようよ!と蓮斗が提案した。
私と紗綾は心の中で蓮斗ナイスと同時に思ったのは言うまでもない。
ぜひぜひとレオはスマホを出し、すんなりと連絡先を教えてくれた。
じゃあまた学校でねーと皆と別れ、カフェでの夢のような時間を噛み締めながら帰路についた。

それからあっという間に一週間が経った。
家のソファでスマホをいじっていると電話が鳴った。出ると運転手が到着したとの合図だった。
私は急いで自宅を出て、目の前に停まっている迎えの車に飛び乗った。
会社に着くと、恐らくドル隊の子と思われる綺麗な女性と何人かすれ違った。
受付で名前を伝えると、二十代半ばくらいの女性スタッフの方がこちらですと部屋に案内してくれた。
扉を開けると部屋は薄暗く、オレンジのライトが照らされていた。
全面鏡張りでどこを見渡しても自分が映る。
部屋の端で一人の女性が待っていたようだ。
こちらに気づくと立ち上がり、ニコッと微笑んだ。
初めまして~今日研修担当する中野です。よろしくお願いしますと丁寧に深いお辞儀をした。所作が美しく、研修コーチなのも納得だ。
こちらこそ、よろしくお願いします。
初めは緊張しちゃうよね~ と優しく私に微笑みかける。
中野さんを一言で表すと女性の色気代表という言葉がぴったりな方だった。
バストはかなり豊満でEカップはあるのではないだろうか。
私も昔はドル隊として働いていたけど、今は引退して、こうして新しく働くドル隊の子たちのお手伝いをしているの! とのことだった。
時間が勿体ないので、さっそく実践練習を始めましょう!
まずはこの服とこの機械を取り付けて!
と渡されたのはシンプルな白Tシャツにショーパン、そして会社説明の時に見せてもらったおっぱいマシーンだった。
おっぱいマシーンはブラジャーのような形でそのまま自分の胸の上から装着するようだった。割と簡単に装着できるみたい。
市川さんはDサイズにしておきましょう。サイズの目安は自分のおっぱいと同じくらいものが一番フィットするから。
早速着替えてみると、カラダのラインがはっきり見えてしまうファッションのようで、少し恥ずかしかった。
そしておっぱいマシーンが多少重いので、ずっと付けていると肩が凝りそうな気がする。
着替え終わった私を見て中野さんは市川さんはすごく華奢だね!と私の全身をまじまじと見ながら言った。
男性はぽっちゃりが好きってよく良うけど、実際はさ、華奢好き男性の方が明らかに多いんだよね!
見た目を気にしているアイドルは特にさ。と中野さんは笑った。
さ、今回は私をアイドルと思ってもらって、実践練習します!
フリートークは自分なりにして貰うって感じで、私が教えるのは一番肝心の行為のみ!
そして、はいどうぞ~と渡されたのは手のひらサイズのボールのようなものだった。
これはびっくりするかも知れないけど、女性の膣を再現した機械になるの!
会社説明の時に聞いたかしら?
ボールの中央に切れ込みがあるのが分かる?そちらに指を入れてみて!
私はそういえば会社説明の時にも触れせて貰ったなと思いつつも言われたとおり、ボールの切れ込みにぶすっと指を入れてみた。
そしてうわっと声に出し、すぐに指を引っこ抜いた。 前と同じような反応をしてしまったがぬるっとする。
びっくりするでしょう!と中野さんはケラケラ笑った。
そこは男性の性器を入れる場所になるの!
中にはローションがたっぷり入っていて、女性の性器を忠実に再現してるのよ。
ちなみにローションの成分はオーガニックのものを使用していて安心安全が売りなんだって。
そういえばこのローション貰ったんだったと思い出した。
しかもこのすごい所が男性の性器のサイズに合わせて締め付け具合を調整するの!
この機械は特許を取得してて、男性はまるで本物の女性としていると感じてしまうくらいのクオリティーなんですって。
と涼しげに話す中野さんに、私はなるほど。そうなんですね。とパッとしない相槌を打つことしかできなかった。
ちなみにこのアイテムはね、ちつこって言うの。ネーミングセンス疑うよね。とケラケラ笑った。
中野さんは、さてと言って部屋の隅に置かれたソファベッドにどさっと座り込んだ。
私をアイドルだと思って貰って、性行までの流れを説明するね。
市川さん、隣に座って。と言われ恐る恐る中野さんの隣に腰を掛ける。
アイドルによっては、迫ってくるドSタイプの人もいれば、受け身タイプの人もいたりと色んな人がいるんだけど…
ドSタイプのほうがドル隊としては相手任せなのですごくらくだけど、今回は控えめなタイプを想定して行ってみましょう~ とパチっと手を鳴らした。
わかりました。よろしくお願いします。
じゃあ早速だけど市川さん、私にキスをしてみて。
私は本当にするんですかと聞くと、勿論。と中野さんは答えた。
女同士でキスするの初めて?
そりゃそうです。と私が言うと、抵抗あるかも知れないけど、仕事と割り切る練習にもなるから実際にしてみて。と断れない雰囲気だ。
まさか女性にキスすることになるとはと思いつつ、 突然始まった実践練習に緊張で手汗が滲む。
女性にするのは気が引けるけどと内心思いながら、ドキドキしながらキスをした。
なんだか変な感じがする。
そしてベッドに横たわり、中野さんが突然、私の胸に手をあて揉み始めた。
自分の胸ではなく、マシーンの上からではあるけど間接的に触られているようで、何とも不思議な気分だ。
キスと胸タッチまでは必須の工程だけど耐えられそう?と心配そうに私の顔を覗き込む。
慣れるまでは変な感じがするよね。
私耐えられるのかなと不安になってきた。
するといつの間にか用意していた男性の性器のような器具を中野さんは股下にあて、先程のちつこをこちらに挿入して。と私に指示をする。

私は慣れない手つきでその性器に向かってちつこを差し込んだ。
何回か上下に動かしてみて。
中野さんに言われたとおり、何度か上下に動かす。
こうやって動かすと相手が喜ぶから、覚えておいてね。とにっこりと微笑み、ゆっくりと起き上がると中野さんはお疲れ様。と私に声をかけた。
本当はもっと時間をかけて行って貰うけれど、一通りの流れはこんな感じ。
ちなみに稀だけど、変な性癖を持っている人もいて、髪を引っ張って欲しいだの、叩いて欲しい叩かせて欲しいとか要望をされることもあるけど、全然断ってオッケーだから。 私たちはあくまで性のサポートだけで、アブノーマルな行為はしないことになってるの。
なるほど… アイドルでもそういう人たちもいるのかと変に想像してしまう。
この今装着して貰っているおっぱいマシーンは自分に取り付けて貰うから、感覚的には本番はしていないけれど、演技はしなきゃ駄目よ。
相手も盛り上がらないから。
今の市川さんの状態だとマグロだから、経験がないのならAVを見て予習すること!
マグロですか?と私が不安そうに聞くと、そうマグロ。と顔色換字に答えた。
中野さんは一通り説明し終わったあと、実際にやってみてどうだった?と私に質問を投げ掛けた。
そうですね…
好きじゃない人とキスしたり間接的だけど胸を触られるって思うといくらアイドルでも大丈夫か不安になります。
すると中野さんはそっか…としばらく考えるようなしぐさを見せたあと口を開いた。
私の話をするとね、私がドル隊になったきっかけはお金を稼ぎたかったからなの。
こんなこと市川さんに言うのは恥ずかしけど、親の借金を背負っていたから、お金が必要だったんだ。 と中野さん自身の話を話し始めた。
そんな時にドル隊の誘いがあって、給料もすごく良いじゃんってことから軽い気持ちで始めたんだよね。
結果的に借金の返済もできたし、軽い気持ちで始めたドル隊の仕事が私にとってはすごく楽しかったの!
テレビで見るアイドルに実際に会って、世間話をしたり話せる機会なんて普通に生活していたらできることじゃないしさ。
元々アイドルにそこまで興味はなかったのだけれど、テレビで見るアイドルの姿と日常のアイドルのギャップを見るのが趣味になっちゃったの。と笑いながら言った。
ドル隊としてなぜ働きたいと思ったのか、やる目的を何かしら見つけないとこのお仕事を続けるのは難しいと思うよ。
市川さんはどうして実際に講義を受けてみようと思ったの?
言われてみればここまでトントン拍子できたけれど、この仕事をやりたいか、やりたくないかと真剣に考えたことは、あっただろうか。優柔不断な自分に嫌気がさした。
私実はアイドルが好きなんです。
だから初めに話をいただいた時は、もしかしたら推しに会えるかもしれないと安易な気持ちで話を聞いていました。
うんうんと中野さんは静かに私の話を頷きながら聞いている。
私大学に入ってからこの容姿でちやほやされることが多くて、人に注目されるようになったんですけど、そこからどこに行っても人の目が気になるようになってしまって。物凄くそれが自分の中でストレスだと気付いてしまったんです。
丁度就職先に悩んでいたこともあって、どうしたらひっそりと生きれるだろうって、ここしばらくずっと考えてました。
ドル隊の話を聞いたとき、表には出ない裏方のお仕事で、ひっそり生きたいっていう私の考え的にもハマってる仕事だなって思ったんです。
特に取り柄もないですし、やりたい仕事も今は分からない。だったら、やってみてもいいかなって。
真剣にこのお仕事をされている方には失礼も承知ですが、自分の本当にやりたいことを見つけるまでの足かせとして働いてもいいかなと思って今ここにいるって感じですかね。私はうつむきながら自分の気持ちを話した。
中野さんは肯定も否定もせず、ただただ私の話に耳を傾けていた。
そして中野さんは一つ気付いたけど‥と口を開いた。市川さんは自分のことを卑下しすぎ!
もっと自分に自信を持っていいのに勿体ないよ!
私も学生の頃はさ、特に何も考えず生きていたし、将来の夢もなかったよ。
ほとんどの人がそうじゃない?
夢を追いかけている人のほうが少ないじゃない?
大抵の人は安定した企業で皆と同じように平凡に暮らしていけたらと思っている人が多いと思うの。
市川さんの場合、人前に出たくないということであれば他にも仕事はたくさんあるよ!
エンジニアや、芸術家、映像クリエイターやブロガー…世の中の職業って沢山あるのは市川さんも分かるよね?
はい…と私は中野さんの言葉に耳を傾ける。
その中でも敢えてドル隊が気になったということは、何かしら縁を感じたからじゃないの?
確かに初めは興味本意でドル隊について知りたくなって話を聞いた。
聞いていくうちにどんどん興味が増したのは、私の中でやってみたいと思ったからではないからだろうか。
カラダを触られたくないという思いがある一方で、アイドルたちの私生活を見てみたいという思いもあった。
そうですね。興味はすごくあります。
辞めたいなら今のうち、覚悟があるなら一週間後が仕事開始日だけどできそう?
中野さんの言葉に、一週間後か…と大きく唾を飲んだ。
やるかやらないかここが最後の決断だと認識した。
中野さんと話して私の中で答えがはっきりした。
はい。大丈夫です。よろしくお願いします!
私の返事に中野さんは、市川さんが決めたことだから最後までやりきってくださいねと真剣な顔をして言った。
大抵の子はお金のためにドル隊を始めるんだよね、私のように借金背負ってたり、自分の美容を稼ぎたいとか将来の貯蓄のためとか…
でも市川さんって、お金のためって訳でもないじゃない?
だから不思議なんだよねぇ。 この仕事に覚悟を持ってやってくれることが。と私をまじまじと見ながら言った。
ちなみにさ、好きなアイドルって誰なの??
私は恥ずかしいなと思いつつも一番好きなアイドルはAトレインです。と伝えた。
あぁ~~あの子たちか!と中野さんはふむふむと言った感じで頷いた。
今年ちょうど人気出始めたグループだよね!今さドラマにも映画にも出たり引っ張りだこだよね。
そうなんです!
自分の好きなアイドルの話をするとどうしても顔がほころんでしまう。
あの子たちは、ドル隊利用したことあったっけな~。
中にはドル隊利用しない子もいるからさ。出会えるといいね。
と中野さんは笑った。
ちなみに聞かれないとは思うけど、社内ではアイドル好きなことあまり言わないほうがいいよ!
ドル隊とアイドルの恋愛はご法度って契約書にも書いてあったでしょ。 会社にいうと色々と面倒だと思うからさ。
あ、そうですよね。分かりました。
グループのうちのひとりでも会えるといいね!と中野さんはポンっと、私の肩に手を置いた。
じゃ、事務所に市川さんの初出勤日報告するね。
最初は緊張すると思うけど頑張ってね!
はい、ありがとうございました。
あと、AVちゃんと見て勉強すること、と最後に強く念をおされオススメのAV動画をいくつか紹介された。
中野さんと別れ家路に着くと、珍しく母が庭の手入れをしていた。
あら、杏梨お帰りなさい。
ただいま…
特に悪いことはしていないのに、さっきまでの実習のせいで、親と目を合わせずらい。
ちょうど、休憩しようと思ってたの!
ケーキ買ってきたからお茶にしない?

母の滅多にない突然のティータイムの誘いにえ!と動揺しつつもいいよと返事をし、家に入った。
なんで今日に限ってと思いながら部屋に荷物を置き、リビングに向かう。
ほら、杏梨が好きなモンブラン買ってきたのよ。
ここのケーキ屋さん、モンブラン発祥のお店らしいのよ。
といいながらポットで沸かしたお湯で紅茶を淹れている。
なぜ、私がこれほどまでにびっくりしているかというと、普段全くと言っていいほど一緒に食事をしないのだ。
母はほとんど自室にこもって絵を書いている。
だから家の家事はほとんど私がやっているのだ。
掃除も洗濯物もご飯もすべて。その分お小遣いを貰っているからいいのだけれど。
そのため普段はご飯も別々で顔を合わせるのも母がトイレに行くときばったり廊下で会うくらいだ。
同じ家に住んでるとは思えないくらい顔を合わせないから笑えてくる。
そんな母が今日に限って私の好きなモンブランを買って一緒に食べようと誘ってくるなんて。
何か理由があるに違いないと思ってしまう。
母はテーブルにつくと、いただきますとモンブランを食べ始めた。 まあ、美味しい。ほら杏梨も食べてみなさい。
そう促され、私もそっとフォークでモンブランをすくった。
本当に美味しい。甘すぎず、ほろ苦い大人なモンブランだった。
美味しいね。ありがとう。
二人で顔を合わせるのが久しぶりすぎて、なんだか気恥ずかしく、私は黙々とモンブランを食べる。
すると、母が口を開いた。
そういえば、杏梨就活の時期よね!就職先は決まったの?
突然の母の質問に、モンブランを口に詰まらせた。
ごほっ。え。就活!?まだ決まってないけど。
今まで私に無関心の母が、就活について聞いてくるなんて、びっくりだ。
あら。まだ決まってなかったのね。
ちょうど良かったわ!あなたに話があるのよ。
そういうと母は席を立ち、自室から薄い冊子のようなものを持ってきた。
これ、あなたにって弘さんが。弘とは私の父のことだ。
今弘さんの会社で新卒採用しているらしいんだけど、杏梨がまだ決まっていないならうちにこないかって言っていたの。
ほら、そこに色んな業種があるでしょ。
チラシに目をうつしてみると、そこにはオンラインファッション業界ナンバーワンの企業で働きませんかという見出しと共に募集要項が書かれていた。
事務職、営業、経理、バイヤーなど業種は様々だ。
お父さん直接言えばいいのになんで、お母さんを通して聞いてきたんだろう。
と私が呟くと、ここまで育てたのは私だからあなたの判断で杏梨に仕事紹を介するか任せるよって言われたの。
本当はは自分で聞くのが恥ずかしいだけなんじゃない?とのことだった。
ちなみに業種はあなたの希望を優先させるって。娘の特権だー!とかなんとか言ってたわよ。とお母さんは鼻で笑った。
ふーん。そっか。
ファッション業界に興味がないわけではない。むしろファッションは好きなほうだ。
しかし父の元で働くという概念がなかった。そんな父が私の就活の心配をしていたなんて。
しばらく会っていなかったが、私のことを少しでも考えていてくれたことが嬉しかった。
考えてみるよ。 と私は母に告げ、ケーキありがとうと言い席を立った。
すると母は、あなたが何をしようと口出しはしないけれど、危ないことだけはしないように。
私からはそれだけよ。と最後に私の背中に向かって言った。
うん、わかった。
自分の部屋のベッドにドサッと倒れこみ、天井を見つめる。
ドル隊って危ない仕事に入るのかな。人には言えない仕事の時点でダメなのかな。
でも中野さんにもやるって言っちゃったしなぁ。
と母の最後の言葉が頭の中を駆け巡る。そしていつの間にか眠ってしまっていた。
 
 初出勤が近づくにつれ、私はそわそわしていた。
家に帰りAトレインのDVDを眺めながら明日の初出勤のことばかり考えていた。
もしAトレインの誰かだったらどうしよう。この間カフェで顔合わせしちゃったし気まずいなぁ。
そんなことを考えていると、突然スマホが鳴り出した。

はい、もしもしと電話に出ると、電話の相手は鈴木秘書だった。
市川さん、鈴木です。お身体はお変わりないですか。
はい、元気に過ごしてます。
それはよかったです。いよいよ明日初出勤ということでお電話差し上げました。
明日の夕方四時頃事務所の車が家の前までお迎えに上がります。
緊張されてますか?
はい、少し緊張しています。
すると電話口の鈴木秘書はふふっと笑い、誰でも最初は緊張するものですよと優しい声で言った。
初出勤の相手のアイドルが決まったのですが、事前にお知りになりたいですか?
すごく気になるが聞いてしまったら、色々と想像してしまいそうだし自分の中でやっぱり辞めたいという感情が出てきてしまうかもしれない。
少し考えて私は当日の楽しみにしておきます。と答えた。
そうですか。不安もあると思いますが、中野が研修での市川さんのことすごく褒めていましたし、自信を持って臨んでくださいね。
アイドルによって要望も違ってくので、その都度柔軟な対応は必要になってきますが、経験を重ねるうちに慣れてきます。
何か今のうちに聞いておきたいことなどありますか。
私は少し考えて、以前アイドルの中に非恋愛依存の方が一人いると言っていたと思うのですが、明日はその方だったりしますかと口にした。鈴木秘書に聞いてから、男性の非恋愛依存がどんな人なのか気になってしょうがなかった。
私の質問に鈴木秘書は返答に困ったのか数秒沈黙し、答えた。
こちらから進んでお伝えることは個人情報に関わるのでお教えはできないのですが、市川さんご自身がスパドルである以上、その方とは機会があれば何度もお会いすることになると思います。
勿論相手の方が市川さんをご指名すればの話になりますが。
以前もお伝えしたように、非恋愛依存の方は指名制で好きなドル隊を選べるので、間接的にわかってしまうと言うことになりますね。
そうですか。わかりました。
ドル隊を続けることで誰か分かるかも知れないってことか。
今まで特定の人に興味を持つと言うことがなかった私にとって、非恋愛依存の彼の存在が気になることは大きな変化に感じた。
ドル隊をしてそのアイドルと対話してみたい。そう思った。
それでは、明日よろしくお願いします。何かあればすぐに連絡してくださいね。

ありがとうございます!失礼します。
そう言って電話を切り、段々と実感が湧いてきた。
不安と少しのワクワクを胸に秘めながら、そうだ。中野さんに言われていたAVを見て勉強しなきゃとイヤホンをして見始める。
最近気づいたのは、勉強目的ではあるけれど、ここ一週間毎日AVを見続けていたので、変な気持ちになっていることだ。私変態になってしまいそうな気がすると変な不安が私を襲ったのだった。
 翌朝起きて、いつもより丁寧にスキンケアをし、軽くマニュアルを見て復習をした。
リビングに行くと、母は出掛けているようだった。
これからは夜出勤が多くなるので、母とは更にすれ違い生活になりそうだ。まあ、今もほとんど顔を合わせることはないが。
迎えの16時まで少し時間があったので、散歩がてら近所のコンビニに行くことにした。
パラパラと雑誌を見ていると、アイドルページが目に止まった。
今日の相手はどのアイドルなんだろう。そんなことを考えながら、アイスコーヒーを購入し、家に戻る。
普段よりも丁寧にメイクをして、先ほど立ち読みで見たモテ服を参考にコーデを組んでみた。
そういえば服装とかも何も言われてなかったけど、自由なのかな。
そんなことを考えているとスマホが鳴った。
電話に出ると迎えの車がついたとの連絡だった。
いよいよ初出勤だ。支給された道具を身につけて急いで着替えを整え。忘れ物はないか確認をし、軽く香水を手首につけて家を出た。
家の前には黒塗りの車が止まっている。運転手が扉の前に立ってドアを開けてくれた。
ありがとうございますと車に乗り込む。
それでは出発しますね。と運転手が言い、車が走り出した。
今日は六本木周辺で勤務していただきます。
ご自宅なので詳しい住所はお教えできませんが、業務が終わる頃にまた私が迎えに参りますので、ご安心ください。
段々と近づく初出勤に自分でも不思議なくらいに緊張してきた。
警備員が常時いる警備の厳しいマンションらしく、運転手が名前を伝えると大きなゲートが開いた。
車が進み、地下駐車場に到着した。
運転手は扉を開け、中に真っ直ぐ進んでいただくとインターホンがあります。708を押して名前を伝えてください。
返答はありませんが、エントランスの扉が開くと思いますので、そのまま進んでください。
するともう一つの扉がありますので、同じく708を押していただくとエレベーターに繋がる廊下に出ます。
7階まで上がっていただき、708号室のインターホンを鳴らしてください。計三回インターホンを鳴らしていただくということです。そのお部屋に本日のお相手の方がいらっしゃいます。
なんともセキリュティーがしっかりしたマンションだ。
分かりました。私は緊張で唾を飲み、中に進んだ。
教えられた通り、インターホンを鳴らすと返答はないが静かに扉が開いた。自分の顔がインターホン越しに変に映っていないか少し気になる。
暫く進むともう一つのインターホンがあり、もう一度同じ番号を鳴らす。
エレベーターに乗り、7階のボタンを押した。
7階に着くと、まるでホテルのような青い絨毯がひかれた廊下が続いていた。
708号室と書かれた扉の前に着き、いよいよ相手と対面だ。
一息ついて意を決して最後のインターホンを押した。
インターホン越しから声が聞こえた。
どうぞー。鍵開けたんで、そのまま入ってきてください~!
ガチャと扉を開けると大理石の大きな玄関が迎えてくれた。
さすが高級マンションと感心してしまう。
すると奥からスリッパのパタパタっという音が聞こえ
こんばんは!白川さんですよね。青砥リクです。今日はよろしくお願いします。
青砥リクといえば、最近デビューしたアイドルグループ、アクアスイートのセンターを務めている。
初出勤の相手は、今一番若手の人気アイドルだった。私よりも年下だったような気もする。
白川るなです。今日はよろしくお願いします。
私の源氏名は白川るなになった。自分で決めたのだが、特に理由もなくなんとなくパッと思い浮かんで綺麗な名前に感じたからこの名前にした。
玄関で話すのも何なんで入ってくださいと言われ、少し緊張しながら靴を脱ぐ。
廊下を進みリビングに入ると、一人だとだいぶ広いのではないかと思うくらいの空間が広がっていた。
インテリアはモノトーンでまとめられており、ザ男の部屋という感じだ。
よかったらそこのソファにかけてください。飲み物はお茶でいいですか?

はい。ありがとうございます。
カバンとコートを置き、ソファに腰掛けた。
実は僕もドル隊を利用するの初めてで少し緊張してるんです。
お茶を注ぎながら、リクはそうつぶやいた。
そうだったんですか。
白川さんも初出勤と事前に知っていたので、今日はお互いにとって思い出深い日になりそうですねとリクははにかんだ。
私も緊張してます。
リクさんに癒しを与えられるように努めます。と改めてお辞儀した。
するとリクはくすっと笑い、そんなかしこまらなくて大丈夫だよと優しく言った。
あと、距離間あるから敬語やめよよう。
あ、うん、そうだね。タメ語で話すねと緊張からかぎこちない返事をした。
女の子と二人っきりで話すのなんて何年ぶりだろうって感じなんだよね。ずっとデビューのために稽古と家の往復の日々でさ。
勿論アイドルだから、スキャンダルもご法度なわけで、極力女の子と二人きりになるのは避けてだんだよね。

そうだったんだ。確かにアイドルだと気軽に女性とも関われないよね。
そうなんだよ。だから今日はすごく楽しみだったんだ。しかも白川さん俺のタイプの人だったし。
とリクは笑った。
あと名前‥るなちゃんって呼んでもいい?俺はリクって呼んで!
うん。リクって呼ぶね。
なんとなくお互いの自己紹介をし、今日は五時から九時までるなちゃんの時間を貰ったから、まずは一緒にご飯食べよう!
とリクは立ち上がって、嬉しそうにキッチンに入っていくと、じゃんっ!と箱に入ったフライドチキンを持ってきた。
最近ハマってる韓国ドラマでさ、カップルが一緒にフライドチキン食べてて食べたくなっちゃったんだよね!
そういってリビングテーブルにチキンを置いた。
温かいうちに食べよう!
飲み物は何にする?お酒がいい?ソフドリにする?
仕事で来ているのにこんなに至れり尽くせりでいいのかと思いつつも私はどちらにすべきか悩み、合わせるよと答えた。
じゃあさ、せっかくだからチャミスルにしよ!
韓国ドラマに影響され過ぎだけど。とリクは笑った。
小さめのグラスにチャミスルをなみなみ注ぎ、
それじゃ初めましてに乾杯!
とグラスを交わしチャミスルを飲んだ。
一気に流し込んだからか、喉が熱くなるのを感じる。
そしてお互いチキンを頬張った。
杏里ちゃんはお酒結構いけるの?
うん!強いほうだと思う。リクは?
俺はすぐ顔赤くなるんだよね!だけど量は飲めるほうかな。メンバーともよく宅飲みしたりするよ!
そうなんだ!メンバーでは誰とよく飲むの?
んー、悠太かなー、
分かる?悠太?
もちろん、アクアスイートのメンバーは一応全員知ってるよ!今一番勢いあるグループだもん。
まじで?それは嬉しいわー。ドル隊の人ってアイドルの勉強もしたりするの?
ううん、勉強はしないかな。
恋愛禁止だから逆に相手を知りすぎちゃうのも良くないのかも。
そっか。そうだよね!
もしもだけど俺が仮にるなちゃんを好きになっても付き合えないってことだよね?
うん、そういうことになるね…
そっかー。そう考えるとちょっと寂しいなー。
リクは少しのびをし、寂しそうな顔をした。
 チキンも食べ終わり、私は次なるステップに行かなければならなかった。
研修を思い出して、そろそろシャワー浴びる?と声をかけた。
リクは一瞬驚いたように目を見開き、そっか。そろそろか。それって一緒に入るってこと?と聞いた。
シャワーを一緒に入るものなのか、勉強不足でなんて答えればいいのか分からなかった。
しかし極力恥ずかしいことは避けたかったので、多分シャワーは一緒には入れないかもと小声で言った。
リクはあ、だよね!とすこし頬を赤らめ、先浴びてきちゃうけどるなちゃんも入る?と聞いてきた。
私は済ませてきたから大丈夫だよ。 
そっか。じゃあ行ってくるねとお風呂に向かった。
遠くからシャワーの音が聞こえ始めると、いよいよ本番だと実感し緊張してきた。
復習でもしようと、頭の中で研修を振り返った。
そしてふと、研修中の中野さんの言葉を思い出した。
一番大切なのは楽しむこと。
色気を出そうとか、相手の快感を探すことももちろん大切だけど自分が楽しまないと、ただ作業をこなすだけになってしまうし続かないから。
市川さんが楽しめるポイントが見つかるといいけどね。
と言われたのだった。
そんな中野さんの言葉を思い出していると、バスルームからリクが出てきた。
きちんとバスローブを巻き、鍛えられた胸筋がちらりと覗いている。
多分、世の中の女性はこの光景を羨ましがるのだろうなと冷静に考えていた。
それじゃ、ベッドに行こう!私はリクの手を引いて、寝室に向かった。
ベッドに着くと、私は研修中に教わったことをフル回転で思い出していた。
私自身も彼氏がいたことがないため、経験がないのだ。
恥ずかしいから、部屋の電気暗くしてもいいかな?と私が恐る恐る聞くと、もちろんとリクは部屋の明かりを暗くしてくれた。
ベッドに二人で腰を掛けて、優しくキスをする。
するとリクもスイッチが入ったのか私の頭に手を回し、濃厚なキスをしてきた。
そのまま倒れる形で横になり、私は教わった通りに見よう見まねで動いた。
時々相手の顔色を見ながら、気持ち良さそうな箇所を攻める。
そして、彼が胸を揉みはじめると、なんとも言えない変な感じがした。
自分の身体ではなけれど、振動が伝わって、実際に自分の身体を触られている気分になる。
前戯をある程度し、いよいよ挿入だ。
ちつこをうまく使えるか、緊張する。
初めて大きくなった男性の性器を目の当たりにし、少し同様してしまう自分がいた。
私は頭の中でAVで見た通りにすれば大丈夫という言葉を繰り返した。
じゃあ入れるね、とゆっくりと挿入しちつこを動かすと気持ちが良いのだろう、リクは少しビクッとし、気持ち良さそうに悶えた。
久々すぎてすぐいくかもという言葉と共にすぐに射精をした。
行為が終わるとなんだかお互いに恥ずかしくなりふたりで照れるねと言いながら布団にくるまってクスクス笑った。
そしてぎゅっとしてもいい?とリクに聞かれうんと答えると優しくリクは私を抱き寄せた。
久々に女の子とこういうことしたけどさ、やっぱりいいね、俺今まで良く我慢してたなって感じたよとリクは笑った。
嫌じゃなかった?るなちゃんも初めてだったんでしょ?と聞かれ、ううん、全然嫌じゃなかったよと答えた。
自分でもびっくりしたのは、相手が気持ち良さそうな顔をしているのを見るのは嫌ではなかった。
それこそ、本物のアイドルとこういう好意をする経験はなかなかないからかも知れない。
会ってたった数時間で裸同士の付き合いになるのは、不思議な感覚だった。
俺さ、多分何回かるなちゃんに会っちゃったら、本気で好きになっちゃうと思うんだけど…ドル隊って会う回数決まってるんだよね?
と言う言葉にリクの中では私は好印象だったようで安心した。
そうだね。ランダムで会えても二回とか多くて三回までだだたかな。
私はスパドル枠なので、回数は設けられていないが、そこまでの内情を伝えていいのか分からず、その事は伏せておいた。
スキャンダル取られちゃったら、私たちの仕事って意味がなくなっちゃうしね…
そっか…
でもるなちゃんもこれからたくさん会うアイドルたちの中で、好きな人ができても付き合えないって辛くない?
リクは真っ直ぐな眼差しで私を見てきた。
んー、そうだね。でも私人を好きになったことないから…
と言うとリクは目をまん丸にして、まじで!?そんな人いるんだ…とポカンと私を見つめた。
るなちゃんって芸能人並みに綺麗だし、言い寄ってくる人もたくさんいそうだけど付き合ったこともないの?
今まで私みたいな女性に出会ったことがなかったのだろう、リクは興味深々に私に色々と質問をしてきた。
なんとなく付き合ったことはあるけど、すぐに別れちゃってたかな。
リクはどんな人を好きになるの?
私は人を好きになるポイントが分からないため、単純に興味があった。
え、そうだな、正直な所まずは見た目から入るかな。自分の好みの子だったら気になって話しかけるかも。

ふーん、そうなんだ!
私も告白された相手に私のどこを好きになったのか、ある時から必ず聞くようにしていた。
自分自身、自分のどこが好かれるポイントなのか分からないからだ。
すると皆口を揃えて、可愛いくて優しいしとか、綺麗でスタイルがいいしと容姿を褒めてくれた。
嬉しいけれど私の中ではどうもそれが、告白するには好きの度合いが薄く感じてしまうのだ。
あとは、一緒にいて居心地が良いとか、身体の相性も大切かも!
身体の相性?
身体の相性と聞いたのは初めてだった。
そうそう!
言うても俺もそこまで経験はないけどさ、人によってエッチの気持ち良さって変わってくるんだよ!
ドル隊の子たちとは本番はないから、相性確認できないけどね。とリクは笑った。
そうなんだ!相性も大事なんだね!
そうだねー。結婚とかずっと一緒にいるなら尚更大切だと思うよ。
るなちゃんは意外にピュアなんだね!
ドル隊の子たちって、アイドル好きか経験豊富な子の集まりかと思ってたよ!すごく偏見で失礼な話だけど。
まあ、私もアイドルは好きだが、それは言わないでおくことにした。
なんかリクと話してたら、私もたくさん経験したほうがいい気がしてきたよ。
若いうちしか、許されないような気がするし…と私が真顔で言うと、リクはハハハっと大きく笑い、なんかるなちゃんがチャラくなるように背中押しちゃった感じになったね!
俺はるなちゃんならいつでもウェルカムだよ!と両手を広げた。
舞台のような動作に私もクスクス笑う。
あ、それはどうもありがとうと微笑んだ。
良かったらさ、連絡先交換しない?もう会えなくなるかもしれないの、俺嫌なんだけど…
会社の決まりで個人の連絡先の交換はしてはいけないことになっている。
その決まりはかなり厳しく、最初の契約書には違反した場合は一億~三億の罰金、そして解雇されてしまうと記載があった。
それくらい、アイドルのスキャンダルは多額のお金が動く。
中にはしつこく連絡先を聞いてくる人もいるらしいが。
連絡先を交換すると罰金や解雇されてしまうことを伝えると、そっか。それなら仕方がないねとリクは思いのほかすぐに引いた。
そろそろ時間だねとリクは部屋着に着替え、私も身支度をした。
玄関先に着くと、お互い仕事頑張ろうねとリクは優しく微笑みハグをしてくれた。
うん!今日はありがとう!
初めての人がリクでよかった!と私が伝える、これからるなちゃんが他の人にも同じことするって考えると嫌だなー。とリクはくしゃくしゃと頭をかいた。
え?なんで?と私が不思議そうに答えると、男はそういう生き物なの!と頭をそっと撫でられた。
じゃあ、身体に気をつけてねと私が手を振ると、るなちゃんも元気でねー!とリクはひらひらと手を振り扉を閉めた。
エントランスを出ると少し肩の荷がおりたのを感じた。
地下駐車場で待機していた車に乗り込み、帰りの車内で早速鈴木秘書から電話がきた。
杏梨さん初出勤お疲れさまでした。お仕事はいかがでした?
相手のリクさんが、優しい方だったので、割りと緊張せずに出来たと自分では思ってます。
それはよかったです。後日リクさんから今日のアンケートが届くかとおもうので、それを見ながら改善ポイントなどもお話できたらと思います。
嫌なこととかはございませんでしたか?
はい、全然なかったのですが、ひとつ疑問に思ったことがあって。
はい、何でしょう。
シャワーは一緒に浴びなければならないとか決まりはあるんですか。
すると鈴木秘書はシャワーの説明していなかったんですね。失礼しましたと言い、ドル隊の方々は機械を付けているので、基本は入りません。
ご自宅でシャワーを浴びて貰っています。
相手の希望があれば身体を流したりすることもありますが、ご自身の判断にお任せしています。
杏梨さんの初出勤、すこし緊張していたのですが、特に問題なかったとのことで安心しました。
残り数ヵ月の学業と両立しながら、また予定を組みましょう。
今日はお疲れだと思うので、ゆっくり休んでくださいね!
お疲れさまでした。

そういって電話を切るとちょうど家の前に到着していた。
運転手にお礼を伝え、私はそっと家の中に入った。
母は既に寝ているようだ。
物音を立てぬよう静かに階段を登り、自分の部屋で取り付けていた器具を外した。
身体がらくになり、解放された気分になる。
このおっぱいマシーンずっと付けてたら肩凝りそうだなと外しながら思った。
そう言えばちつこは回収するって言われていたことを思い出した。
専用の袋に入れて保管しなければならならないのだ。
おっぱいマシーンは繰り返し使うようなので、綺麗にアルコールでふく。
このおっぱいマシーン、体にピタッと密着して違和感がないので本当に凄いなと何度見ても感心してしまう。
母にバレないようにそっとクローゼットの奥にしまい込んだ。
初仕事で色んな神経を使ったのか急に疲労が襲ってきて、その日はお風呂に入り、ベッドに入るとすぐに寝落ちしてしまった。