あとがき

三年後私たちは初めて二人が出会ったオーストラリアのホテルで親族だけの小さな結婚式を挙げた。
レオ、紗綾、蓮斗も駆け付けてくれた。
青空はと言うとアイドルを辞めた後、代官山に子供向けのダンススクールを開いた。
やはり元アイドルだけあってかなり人気の教室となり、三年間に五店舗都内に展開するほどの盛況ぶりだ。
 私はと言うと父の会社でバイヤーとしての経験を積み、今は自分のブランドを展開して独立をしたばかりだ。
SNSのフォロワー数も延びているおかげで、売上も好調だ。
私が表舞台に出たことにより、青空との結婚はネットニュースや週刊誌に載ることになってしまった。
かつて編集長だった橋本さんは藤田の記事の一件で功績を残し、今は専務取締役になった。
私たちの結婚報告した際、こういうのは一番最初の記事が記憶に残るから印象操作をしようと私たちを二十年来の幼なじみの結婚と称して記事にした。
批判的なコメントも多かったが、幼なじみから結婚したの尊い。青空が幸せならそれでいい。杏梨さん、仕事でも活躍しているのに最高の旦那手に入れてて凄すぎ。など肯定的なコメントが圧倒的に多かった。
私たちは幼なじみとは言いがたいけどねと二人で記事を見ながら苦笑いを浮かべていたが。
この件があり、ネットニュースや週刊誌の情報が全て正しくはないことを学んだ。
だからこそ、知らない誰かが私に心ない言葉を向けたとしても、あまり気にしなくなった。
たまに青空のファンと思われる人が批判的なコメントを私のSNSに残しているが、ただの一意見として捉え、傷付かなくなったのは自分でも強くなったなぁとしみじみと思う。

ちなみに藤田は無期懲役、鈴木秘書は殺人ほうじょ罪として懲役十年の重い判決を受けて現在服役中だ。
その事件に関わった人達も何人か逮捕されたようだが、詳しくは情報を追わなかった。
それよりも今の幸せに目を向けたかったからだ。
これから先も辛いことや苦しいことがあるかもしれない。
けれど青空の笑顔を側で見ることが出来たら、それだけで私は幸せなんだと彼と一緒にいて素直に思う。
恋愛なんて全く興味のなかった私が、青空に出会って初めての感情を沢山教えてくれた。
私にとって彼は沢山の愛を与えてくれて、私の永遠のアイドルでもある私の愛しい人。