≪そんなこと、初めて言われた≫

≪偉そうなこと言ってたらごめんなさい≫

≪ううん、嬉しかった。ありがとう≫

 達樹さんの“嬉しい”の言葉に、私が嬉しくなる。
 
 心がポカポカする。今日、マッチングアプリに登録してよかったな。達樹さんとマッチングして、おしゃべりできたことも、すごく嬉しかった。達樹さんと話していると、満たされていくような感じがする。達樹さんとだけ話せればいいかな、なんて思ってしまうほど。
 
 もっと話したい。もっと、達樹さんのこと知りたい。
 
 そう思うけれど、明日も仕事でそろそろ寝なくちゃいけない時間だ。夜の十一時。普段なら、とっくに電気も消して、布団に入っている時間だ。寝ないと明日の仕事に響く。
 
 そろそろ寝ます、の、文字を打とうとした瞬間に届くメッセージ。



≪いつか、リノを見に来てくれたら嬉しいな≫



 え……。それって、デートってこと?
 
 どくん。どくん。穏やかだった心臓の音が、一気にうるさくなる。え、えっ。どうしよう。達樹さんに、そう言ってもらえるなんて想像もしていなかった。
 
 急展開すぎる。話し始めたばかりで、相手のこともなにも分かっていないのに。会うなんて……。でも、達樹さんのことを気になっている自分がいるのも確かで。達樹さんに会ってみたい。でも、今返事をしたら、がっつきすぎ、なんて思われないかな。
 
 なんて返事をしようか迷っていると、達樹さんから追加でメッセージがきた。



≪ごめん。なんか家に誘っているみたいに言ってしまった。知り合ったばかりの男に、こんなふうに言われたら怖いよね。ごめん≫



 私は単純なのかもしれない。いや、単純だ。

 達樹さんの言葉にきゅんと、胸が高鳴る。

 相手を思いやれる優しい人。相手に嫌な思いをさせた、と思ったら素直に謝れるのは素敵なところだと思う。たったひとつのメッセージなのに、大切にされているような、そんな気持ちにさえなってくる。達樹さんの言葉、ひとつひとつが好き。優しくて、あたたかい。

 知り合ったばかりの人に、そんな気持ちを抱いてしまう私も私だと思う。こんなことを相手に言ったら、絶対に引かれる。でも、達樹さんだったら「嬉しい」って言ってくれるかもしれないな。