美優(みゆ)って呼んでください。あなたのことは、どう呼んだらいいですか?≫

≪素敵な名前ですね。俺は達樹(たつき)です。好きなように呼んでください。今日はお休みですか?≫

≪じゃあ、達樹さんって呼びますね。今日は仕事でした。うちはシフト制なんですよ≫

≪俺もです。一緒ですね!≫



 私はトーク画面を開いたまま、達樹さんの返事を待つ。返事を待っている間、何度もメッセージを読み返す。名前を褒められたことも、語尾にビックリマークがついていたことも、なんだかきゅんとしてしまう。
 
 思い出したくないけど、元カレとの最初のやりとりも、確かこんな感じだったとも思う。当たり障りのない、ごく普通のやりとり。だけど、元カレのときはこんなにドキドキはしなかった。少しくらいはドキドキしていたのかもしれないけど、淡々とやりとりをしていた気がする。趣味の話題になって盛り上がって、会ってみようか、って話になった。
 
 でも、達樹さんはなんだか違う。自己紹介のインパクトが強かったからなのか。怖い人なんじゃないか、って構えていたからか。話してみると、達樹さんという人は、本当は優しい人なんじゃないかって思う。

 数回のメッセージのやりとりだけで、なにが分かるんだ! と、言われればその通りだと思う。だから知りたい。純粋に達樹さんと話してみたい。



≪写真の猫ちゃんは、達樹さんと一緒に暮らしているんですか?≫

≪そうだよ。この子の名前は“リノ”っていうんだ≫

≪女の子?≫

≪女の子。良かったら、写真見る?≫

≪見たいです!≫