「んで? 今回は長く続きそうなの?」

「達樹さんとは長く続くよ! そんな気がする!」

「はあ。まあ、せめて三か月は持たせてよね。何回彼氏が変われば気が済むのか……」



 ため息をつく千尋は「すみませーん」と店員さんを読んで、コーヒーのお代わりを頼んでいる。私も追加で頼もうかな。今日は千尋と長話になりそうだからな。

 頼んでから数分で運ばれてくる二つのコーヒーカップ。私はカフェオレ。千尋はブラックコーヒー。私もブラックコーヒーの味が分かる人間になりたいな、って千尋を見て思う。だって、コーヒーを飲む千尋の姿がかっこいいんだもん。



「達樹さんは素敵な人なんだけどさ。なんていうか、いい人すぎて悩んでいるっていうか」

「ふうん」

「真面目に聞いてよねっ。……達樹さん、私に触れようとしないんだよね」

「は?」

「付き合って一か月も経つのに、キスどころか手も繋いでくれないの」



 私の最近の悩みはこれだ。デートのときは三十センチ以上離れて歩く達樹さん。私はもっとイチャイチャしたいのに!

 ……私から「手を繋ぎたい」って言えばいいんだけどね。がっついているとか思われたくないし、拒否されたらと思うと怖くて言えない。達樹さんは私を拒絶するような人ではないと思う。だけど、もし、私がワガママを言ったばかりに「面倒くさい奴」だと思われたらいやだ。達樹さんのことを大事にしたいと思うからこそ、慎重になってしまう。怖くなってしまう。