ガサガサッ。ガサガサッ。



「わっ!」



 急に聞こえた音に思わずびっくりしてしまう。私の声に反応したのか、達樹さんも手を止め、振り返っている。私たちの視線の先には、倒れた状態の紙袋と、お尻だけ飛び出た猫がいた。



「リノ! だめじゃん。勝手に漁ったら」



 達樹さんは慌てて猫を紙袋から引き離して、そのまま腕に抱える。



「その子がリノちゃん……?」

「そう。呼びづらいと思うから、“リノ”でいいよ」

「じゃあ……。リノはなんで紙袋の中に入ろうとしたの? 中には何も入ってなかったのに」

「リノは紙袋が好きなんだよね。あとはビニール袋とかカバンも。人のカバンを勝手に漁るときもあるんだよね。言い忘れてたけど、カバンも気を付けてね」



 困ったように笑う達樹さん。リノを抱きかかえながら、テーブルの向かいに座る。リノを撫でながら「人のものを勝手に漁っちゃダメだよ」って言っている。怒っているのか愛でているのか分からない。 きっと、可愛すぎて怒れないんだろうな。



「ふふっ。可愛い」

「リノ、可愛いでしょ」

「うん。リノも達樹さんも可愛い」

「えっ」

「私もリノを撫でたいな」



 テーブルに身を乗り出し、リノに触れようと手を伸ばす。その間、ずっとあたふたしている達樹さん。「えっ。えっ」って同じ言葉を繰り返している。言葉にもなっていないけれど。

 達樹さんの反応が可愛くて、リノから達樹さんに視線を移す。