達樹さんが柔らかく微笑んだ。その横顔がなんだか優しく見えた。それと同時に、痛くなる胸。達樹さん、本気で結婚を考えているんだ……。いつか出逢う、達樹さんの運命の相手はきっと幸せなんだろうな。出会ったことのない人のために、自分の仕事を決めるなんて、私にはできない。将来を共にする人との生活のために、行動している達樹さんがかっこいい。

　そんな達樹さんが好きになる相手は、どんな人なんだろう。私は、達樹さんの中の彼女候補に入れるのかな。達樹さんが他の女の人と付き合ったら？　結婚したら……？

　そんなの嫌だ。達樹さんに好きって言って欲しい。この車の助手席に座れる人は、私だけがいい。

　私。達樹さんのことが好きになっちゃった……。
　
　スカートをぎゅっと握りしめる。好きになるのが早すぎる。私って、こんなに簡単に人を好きになっちゃうタイプだっけ？　……違う。達樹さんだから、好きになった。それは間違いない。
　
　だけど、達樹さんは？　私に対して、まだ、好きとかそういう感情はないだろう。好きになってくれるかどうかも分からない。スカートを握る手が震える。不安が押し寄せてくる。私が達樹さんを好きになっても、フラれることだってあるんだから……。