「そういえば、バイトすんの? 尚と話してるの聞いた」
「するっていうか、面接受けるだけ。受かったらバイトする」
「へえ、いいな。俺も部活が毎日じゃなけりゃやるんだけど。欲しいのありすぎ」
そう、この前朝川さんとバイト探しをして、僕の最寄りから一駅のコンビニでバイト募集しているのを見つけた。最寄りでも一か所あったけれど、そこは夜勤だったので年齢的に駄目だった。
そのままバイトをしたい旨を店長さんに伝えて、今週末面接を受けることになったのだ。
いちおう以前二回くらい客として行ったことがあるのと、店員さんの雰囲気を確認してから店長さんに声をかけたけど、実際入ってみたら違うこともあるだろうから不安も大きい。
その前に受からないといけないんだけど。
テスト期間中もシフトに入らないといけないと言われたら諦めるしかないか。せめてテスト前日とテスト中の数日間は休めるところだといいな。
接客業経験者の朝川さんも忙しくなさそうでいいと言っていたのでちょっと期待していたりする。
昼食終えて昼休み、トイレへ行った帰りに廊下の窓から朝川さんの姿を見つけた。この方向は昇降口近くの自販機の方かな。
高校には二か所自販機が設置されている。昇降口を出たところとグラウンドに面したところ。おかげで冷えた飲み物をいつでも買えるので、持参した飲み物が無くなった時重宝している。
飲み物買うなら僕も買おうか。そう思って自販機の方に向かうと、違う女子の声が聞こえてきた。
「あのさ、それ、勝手に買ったの? それとも一緒に買ったの?」
「別に、どっちだって貴方に関係無いでしょ」
「は?」
会話の相手は朝川さんだった。思わず立ち止まってしまう。
誰かと待ち合わせだったんだ。その割には内容が穏やかじゃない。友だちではないのかな。
何を買ったんだろう。文句を言われるようなものを持ってくるとは思えない。
壁が邪魔でいったい何が起きているのか想像できず、意を決して自販機側に向かうことにした。もし彼女たちと鉢合わせになっても、ジュースを買いに来たという言い訳ができる。
「とにかく、付きまとわないでよね!」
「わッ」
昇降口を出たところで走ってきた女子生徒とぶつかりそうになる。多分、朝川さんと話していた人だ。
「ごめんなさい!」
「ううん、僕もちゃんと見ていなかったから」
名札の色で同学年ということが分かった。一年は青色の線が入っている。そういえば、今朝の人も名札見ておけば最初から分かったんだ。失敗した。
一人になったところで改めて自販機の後ろを覗く。予想通り、朝川さんが立っていた。
「さっきの人怒ってたみたいだけど、何かあった? 困りごとなら聞くよ」
朝川さんはじとりと僕を見て、ぽつりと答えた。
「何でもない。頼田君には関係ないことだから大丈夫」
僕をすり抜けて朝川さんが歩き出す。朝川さんの手にはお財布が一つ。そこで僕があげたキーホルダーが揺れていた。
「あ、ちょっと忙しいから、遊んだりするのはしばらくできなさそう。あと、学校でもあまり話せないかも。ごめんね」
「あ、うん。分かった」
僕は朝川さんを引き留めることができなかった。
「するっていうか、面接受けるだけ。受かったらバイトする」
「へえ、いいな。俺も部活が毎日じゃなけりゃやるんだけど。欲しいのありすぎ」
そう、この前朝川さんとバイト探しをして、僕の最寄りから一駅のコンビニでバイト募集しているのを見つけた。最寄りでも一か所あったけれど、そこは夜勤だったので年齢的に駄目だった。
そのままバイトをしたい旨を店長さんに伝えて、今週末面接を受けることになったのだ。
いちおう以前二回くらい客として行ったことがあるのと、店員さんの雰囲気を確認してから店長さんに声をかけたけど、実際入ってみたら違うこともあるだろうから不安も大きい。
その前に受からないといけないんだけど。
テスト期間中もシフトに入らないといけないと言われたら諦めるしかないか。せめてテスト前日とテスト中の数日間は休めるところだといいな。
接客業経験者の朝川さんも忙しくなさそうでいいと言っていたのでちょっと期待していたりする。
昼食終えて昼休み、トイレへ行った帰りに廊下の窓から朝川さんの姿を見つけた。この方向は昇降口近くの自販機の方かな。
高校には二か所自販機が設置されている。昇降口を出たところとグラウンドに面したところ。おかげで冷えた飲み物をいつでも買えるので、持参した飲み物が無くなった時重宝している。
飲み物買うなら僕も買おうか。そう思って自販機の方に向かうと、違う女子の声が聞こえてきた。
「あのさ、それ、勝手に買ったの? それとも一緒に買ったの?」
「別に、どっちだって貴方に関係無いでしょ」
「は?」
会話の相手は朝川さんだった。思わず立ち止まってしまう。
誰かと待ち合わせだったんだ。その割には内容が穏やかじゃない。友だちではないのかな。
何を買ったんだろう。文句を言われるようなものを持ってくるとは思えない。
壁が邪魔でいったい何が起きているのか想像できず、意を決して自販機側に向かうことにした。もし彼女たちと鉢合わせになっても、ジュースを買いに来たという言い訳ができる。
「とにかく、付きまとわないでよね!」
「わッ」
昇降口を出たところで走ってきた女子生徒とぶつかりそうになる。多分、朝川さんと話していた人だ。
「ごめんなさい!」
「ううん、僕もちゃんと見ていなかったから」
名札の色で同学年ということが分かった。一年は青色の線が入っている。そういえば、今朝の人も名札見ておけば最初から分かったんだ。失敗した。
一人になったところで改めて自販機の後ろを覗く。予想通り、朝川さんが立っていた。
「さっきの人怒ってたみたいだけど、何かあった? 困りごとなら聞くよ」
朝川さんはじとりと僕を見て、ぽつりと答えた。
「何でもない。頼田君には関係ないことだから大丈夫」
僕をすり抜けて朝川さんが歩き出す。朝川さんの手にはお財布が一つ。そこで僕があげたキーホルダーが揺れていた。
「あ、ちょっと忙しいから、遊んだりするのはしばらくできなさそう。あと、学校でもあまり話せないかも。ごめんね」
「あ、うん。分かった」
僕は朝川さんを引き留めることができなかった。


