ケイトは王宮魔導士であり、かつて黒の教団に対抗するために極秘裏に「光の魂の器」となる子どもを生み出すという任務を課されていた。
カインは、その希望の象徴として生まれた存在だった。

だが、予期せぬことが起きる。

ケイトは黒の教団に潜伏していた際、もうひとつの「光の魂のかけら」が転生する兆しを感じ取る。
それが、異世界に生まれる“葵”だった。

「この子とカインは、光の魂の双極。出会うべくして出会う者たち……」

ケイトはそれを確信し、自らの命運を賭して“異世界からの召喚計画”に関与する。
しかし、黒の教団に内通していたリアナによって、計画は失敗しかけ、葵は異世界に取り残される。

その後、カインには知らされぬまま、ケイトはすべての責任を背負い、自ら記憶を封印して王宮の地下に幽閉されていた──。




カインは幼いころから、母ケイトの愛情を受けて育ったが、なぜか心の中に“もう一人分の空席”を感じていた。

それは、まだこの世界にいない“誰か”の気配。

「おまえには、守るべき存在がいる。そのときが来たら、迷わず力を使え」
ケイトは何度もそう言った。

カインは、それが葵のことだったと気づいたとき──
魂が震えるような衝動に襲われた。

だから、彼は出会った瞬間から葵を特別に感じ、守らずにはいられなかったのだ。



ケイトが解放されたあと、葵とともに真実を知ったカイン。

「母さん……俺は、アオイを……」

「ええ。あなたはアオイを守るために生まれた。けれど、それは宿命ではない。あなた自身が選んだんでしょう?」

ケイトは穏やかに微笑む。

「“愛する”というのは、過去や運命を超えた、あなた自身の意志なのよ」

カインは静かに頷く。

「そうだな。俺は、アオイを守りたい。どんな理由よりも、自分の意思で……」