ケイトの魂の影が姿を現した場所──それは、「聖域の深層」と呼ばれる領域だった。
淡い光に包まれた空間の中で、母の姿は優しく微笑んでいた。けれどその瞳の奥には、長い年月の苦悩と、秘めた決意がにじんでいる。
「……母さんは、本当はすべて知っていたの」
葵は黙って耳を傾ける。
「あなたがまだ幼かったころ、私は“聖域の巫女”として、異世界に通じる門を封じていたわ。でも、その力が弱まっていくことに気づいた。黒の教団は、あの頃から動いていたのよ。──だから、私は最後の希望をあなたに託したの」
「希望……?」
「そう。あなたは、“聖なる二重魂《ディア・ソウル》”──私と、あなたの父、そしてこの世界の大精霊の加護を受けて生まれた奇跡の子。……それを知った教団は、あなたの命を狙った。だから私は、あなたを現実世界に送り、異世界の記憶を封じたの」
「全部……全部、守るためだったの……?」
ケイトは微笑み、静かに手を伸ばした。
「葵、あなたに渡すものがあるの。これは、“光の冠”。聖女の資格を持つ者だけが扱える、本当の力よ」
その瞬間、聖域に眩い光が広がった。
葵の胸元に、金色の紋章が浮かび上がる。
その模様は、カインの“焔の紋章”と対になるものだった。
「さあ、目を開けて。あなたの戦いは、ここからよ」
【現実へと帰還──そして、戦端は再び開かれる】
記憶の聖域から戻った葵の瞳には、迷いがなかった。
彼女は今や、“聖女の覚醒者”。
母・ケイトの血を継ぎ、真の力を手にした存在だった。
そして、王都には不穏な空気が漂い始めていた。
黒の教団は、ついに「神殿の封印」に手をかけたという。
その封印が破られれば──世界そのものが、「虚無の神」に呑まれる。
「間に合わなければ、全てが終わる……!」
葵は、聖女の装束に身を包み、立ち上がる。
その背には、カインの影。
「俺はずっと、そばにいる。お前を守るために生まれてきたんだから」
隣に立つ義兄の言葉に、葵は静かに頷いた。
「行こう。母が遺した願いを、必ず果たすために──」
淡い光に包まれた空間の中で、母の姿は優しく微笑んでいた。けれどその瞳の奥には、長い年月の苦悩と、秘めた決意がにじんでいる。
「……母さんは、本当はすべて知っていたの」
葵は黙って耳を傾ける。
「あなたがまだ幼かったころ、私は“聖域の巫女”として、異世界に通じる門を封じていたわ。でも、その力が弱まっていくことに気づいた。黒の教団は、あの頃から動いていたのよ。──だから、私は最後の希望をあなたに託したの」
「希望……?」
「そう。あなたは、“聖なる二重魂《ディア・ソウル》”──私と、あなたの父、そしてこの世界の大精霊の加護を受けて生まれた奇跡の子。……それを知った教団は、あなたの命を狙った。だから私は、あなたを現実世界に送り、異世界の記憶を封じたの」
「全部……全部、守るためだったの……?」
ケイトは微笑み、静かに手を伸ばした。
「葵、あなたに渡すものがあるの。これは、“光の冠”。聖女の資格を持つ者だけが扱える、本当の力よ」
その瞬間、聖域に眩い光が広がった。
葵の胸元に、金色の紋章が浮かび上がる。
その模様は、カインの“焔の紋章”と対になるものだった。
「さあ、目を開けて。あなたの戦いは、ここからよ」
【現実へと帰還──そして、戦端は再び開かれる】
記憶の聖域から戻った葵の瞳には、迷いがなかった。
彼女は今や、“聖女の覚醒者”。
母・ケイトの血を継ぎ、真の力を手にした存在だった。
そして、王都には不穏な空気が漂い始めていた。
黒の教団は、ついに「神殿の封印」に手をかけたという。
その封印が破られれば──世界そのものが、「虚無の神」に呑まれる。
「間に合わなければ、全てが終わる……!」
葵は、聖女の装束に身を包み、立ち上がる。
その背には、カインの影。
「俺はずっと、そばにいる。お前を守るために生まれてきたんだから」
隣に立つ義兄の言葉に、葵は静かに頷いた。
「行こう。母が遺した願いを、必ず果たすために──」



