「く…っ、おまえら、行け!」


ツンツン頭の言葉を合図に、おおおっと叫びながら何人もの男たちが一斉に襲いかかってきた。


最初はそこらへんのヤンキーたちにやられっぱなしだった俺も、何回も喧嘩を重ね痛い思いをするにつれてだんだんと慣れていった。

もうどんなに殴られても、痛いも苦しいも感じない。全部どうでもいい。

そんな俺を周りはいつしか“怪物”と呼ぶようになった。

気に入らないことがあればこの力さえあれば最後はみんな、黙って何も言えなくなる。

時に大人たちはうるさく説教をしてくることもあるけど、そんなの無視していればいい。

こんな時しか俺を見てくれない大人なんて、最初から相手になる気さえ起きないから。


「…あ?もう終わりか」


このまえよりはまあまあしぶとかったツンツン頭が、やっと最後のパンチで地面に倒れた。

さっきまで威勢が良かったのはどこにいったのか。

もう何も言わずに気絶して倒れている数十人の男たちを一瞥し、ポケットに傷だらけの手を無理矢理突っ込んで歩き出す。


「はあ…イライラする」


余計な考え事をしていたせいか、喧嘩をしたのに苛立ちがさっきよりもひどくなっている。

それに、一人一人の力は雑魚でも、何人もの相手を一気にしたせいか歩くだけでふらつく。