ツンツン頭の後ろから待っていましたとばかりにずらっと十人くらいの男子たちが前に出てきた。

人数を増やせば勝てると思っているこいつの頭は幼稚園児か。

なんにしても、逃げるのは難しそうだ。

かと言ってさすがに学校の前で喧嘩したら後が面倒くさい。


「はー…やるならあそこ。人目があるとこは騒ぎになって面倒くせぇから」


学校を右に真っ直ぐ歩いていくと河川敷が見えてくる。

あそこなら通る人も少ないし、奥まで行けば人の全くいない穴場スポットなんかもいくつかあり喧嘩がしやすい。


「もしびびってんなら、俺対おまえでもいいぜ。今なら許してやるよ」


素直に河川敷までついてきたツンツン頭が、喧嘩したくてウズウズとした表情で前に出てきた。


こういうやつらと喧嘩に明け暮れる日々となったのは、一体いつからだっけ。

高校生の放課後の過ごし方と言えば、部活や友達と遊びにいくとかそういったことが普通だというのに、俺の日常は喧嘩ばっかり。

これがかっこいいと思っているわけじゃない。

人を殴って気持ちを落ち着けることで、いつも感じている苛立ちが少しはマシになるから。

言い表せないこの気持ちを喧嘩で誤魔化すことで俺はうまく自分を保っているのだ。


「ごちゃごちゃ言ってねぇで、早く全員でかかってこいよ。どうせ結果は同じなんだからさ」