「ちょ、花楓…！」

「ん？」


友達らしき女子が横から俺の反応を窺いながら慌てて杉咲花楓を引き止めているが、本人は不思議そうに首を傾げているだけ。


「…いらねぇよ。俺に構うなって言ってんだろ」

「なによ？せっかく今年同じクラスになった幼なじみにどうして話しかけちゃいけないの？」


杉咲花楓とは同じマンションの隣同士、幼稚園から高校まで全部一緒で、いわゆる幼なじみというやつであったけど年を重ねるにつれて話すことはなくなっていった。

それなのに、今年同じクラスになってから何かと話しかけてくる。

俺の噂を知らないはずないだろうに、幼なじみの自分には何も危害を加えないとでも信じているのか。

…イライラする。


「綿谷？聞いて…」


ガンっと乱暴に机を足で蹴飛ばす。

勢いで倒れた机に、斜め前の地味な男子生徒がびくりと肩を震わせていた。


「二度と言わせるな。俺に気安く話しかけてくんじゃねぇよ」


さすがに怯えたように俺を見上げてくる杉咲花楓に背を向け、教室を出る。