いつかこの歌が、まだ名前のない君に届きますように

大野の言っていることが何一つ理解できなくて、怪訝に思いながら首を傾げる。


「なに言って…」

「あっれー?大野じゃんー」


後ろから聞こえてきた馬鹿でかいキンキン声に、大野が一瞬で目を見開いた。


「…って、怪物…じゃなくて、綿谷と何してんの?あ、もしかして相変わらずのどんくささで、綿谷のことまで怒らせちゃった?あーあ、俺たちとクラス離れちゃったから教育が行き届いてないばかりに…。綿谷、許してよ。俺から厳しく言っとくからさ」

「ち、ちが…っ」

「…なんだてめぇ?気安く触るんじゃねぇよ」


肩に置かれた手を雑に払い落とすと、ヘラヘラと笑っていた男子生徒がぴくりと頰を引きつらせていた。


「…悪い悪い!大野、ちょっと来いよ」


笑顔を浮かべているはずなのに目が全く笑っていない男子生徒に、大野は俯きながら今までで一番怯えたように震えていた。


「早く。久しぶりに遊ぼうぜ。みんなも呼ぶからさ」

「ぼ、僕…」

「じゃあな、綿谷ー」