「げ、怪物じゃん。あっちから行こうぜ」

「このまえ隣駅の男子校と喧嘩して警察が来るほどの騒ぎだったんだろ?おっかねぇー」

「よく留年せず二年に上がれたよな。そろそろ退学かな」


ダラダラとしていたら時間が過ぎてしまい、結局登校してきた頃には五限がもうすぐ始まる前の昼休みとなっていた。

職員室でいつも通り小言を言われながら遅刻届を受け取り、教室に向かうため廊下を歩いていると、ヒソヒソと俺を噂する声が容赦なく聞こえてきた。

こいつらは俺に向かってわざと聞かせようとしているのか、声をひそめようともしない。

実に気分が悪い。

しかしここで噂をしているやつらに殴りかかったところで怒られるのは俺だけ。

この一年でもう何回も繰り返して退学一歩手前のところまで来てしまっているから、これ以上面倒なやつらに付き合うだけ時間も労力も無駄だ。

本当、この世界は理不尽だ。


「あ、綿谷(わたや)やっと来た!また遅刻して来たの?これ、一・二・三限のノート写したやつ。四限は体育だったからさ。私たちももう二年生になったんだから、そろそろちゃんと朝から登校してきなよね?」


無造作に机の上に鞄を置くと、ポニーテールを揺らしながら学級委員長である杉咲花楓(すぎさきかえで)が目の前までやってくるとノートをコピーしたものを渡してきた。