いつかこの歌が、まだ名前のない君に届きますように

どこから現れるのか帰っている途中で捕まってしまったオトに連れられて、いつもの一人も客がいない古びた喫茶店に来ていた。

「今日は学校どうだった?」としつこいくらいオトが聞いてくるものだからついさっきの出来事を話すと、そんな答えが返ってきた。


「友達?この俺とか?それこそありえねぇだろ。大野とはタイプも全然ちげぇしなんなら俺のこと苦手だと思うし」

「そんなのわからないでしょー?花楓ちゃんとの仲がせっかく戻ったんだから、他にも交友関係広げていけばいいじゃん。てか響輝はなんで体育祭練習行かないの?」


花楓とのわだかまりが解けたことと、新しい友達を作ることはまた別だ。

友達なんて欲しいとも思わないし。


「去年も出てねぇし、クラスのやつらも俺が出ることなんて望んでねぇからだよ」


体育ですら、俺を怖がって避けているやつらなんだから、体育祭とかの学校行事に一緒に出るとなったら居心地が悪いだろう。

俺だって怯えられながら同じ空間にいるくらいなら、最初から出ない方がマシだ。


「響輝はすぐに勝手に決めつけるんだから。そもそも響輝が無愛想なのがいけないんだよ?もっと笑ってみれば、みんなも響輝のことを見る目が変わるかもでしょ?」


オトは俺が学校でなんて呼ばれているのか知らないから、そんなことが言えるのだ。

そもそもオトのように最初から俺を怖がらずに話しかけてくるやつなんてそうそういない。


「みんなオトみたいに能天気な頭してればいいのにな」