「あ、いや…なんでもねぇ」

「そう?じゃあねまた明日」


パッと笑顔を浮かべる花楓は、やっぱりいつもとは違う気がした。

だけどあと一歩が踏み出せず、今日もまた何も言えずに終わってしまった。


「…おせぇな」


ここで帰る気にもなれず、とりあえず教室に花楓が戻ってきたら「最近なんかあった?」くらいは聞こうと待っているが、三十分が経っても花楓は帰ってこない。

掃除なんて長くても二十分くらいで終わるだろうに。

女子同士で話に盛り上がってんのか?


「あはは、いい気味ー。花楓が日に日に元気なくなってくの、見ててすっごい爽快」

「うわー悪女」

「最近うざいと思ってたんだよねー。どうも真面目ちゃんの花楓とは合わないから、ちょっと痛い目見せるくらいがちょうどいいよ。いい暇つぶし見つけちゃったね」


どでかい女子三人組の声が、廊下から響いてここまで聞こえてきた。

…今、なんて言った?


「おい」