「なんでそんなこと言うの?あの子に直接そう言われたの?唯一無二の幼なじみじゃん。響輝にしかわからない、あの子の顔だってあるわけでしょ?大切にしないと後悔しちゃうよ」


そんなこと考えたこともなかった。

花楓とは俺の悪い噂が立ち始めて、喧嘩ばかりの毎日になってからだんだんと話すことがなくなっていった。

元から挨拶を交わしたり、たまに登下校をしたりしていた程度だったけど、俺から花楓を無視するようになったから。


「…今日のあいつの様子がおかしかった気がするんだ。いつも笑顔でいるのに、今だって俯いて歩いてる。らしくないっていうか…でももしかしたら気のせいかもしれなくて、あいつだって大丈夫だって言ってたから。そもそもあいつのことを無視するようになったのは俺だし、今更俺が気にすることでもないのにな」


都合がいい話だと思う。

今更仲良くするつもりはないし、資格もない。


「響輝はさっきから何を悩んでるの?思春期の男子なんだから、女子の幼なじみを無視しちゃうことだってあるよ。それはそれ、これはこれ。響輝が気になるって思うならとことんその子と向き合ったらいいと思うよ。あのね、女の子は大丈夫じゃない時に大丈夫って言っちゃう生き物なの。覚えとくといいよ」

「なんだそれ…」


もう一度花楓を探すが、もうとっくに行ってしまったのか姿は見えなかった。


「あれ、いつの間にか私の家に着いちゃったよ。駅の方反対なのに、わざわざ送ってくれたんだね」