…これは触れない方がよかった話題だろうか。

オトが空元気に笑っているのを見て、少しだけそう考える。


「…無神経だったな。別に言いたくないことは言わなくていいから」

「え、違う違う!そんな重い話じゃないよ。たしかに仕事してて歌手として私も表舞台立ちたいなとは思うけど、それはまだ今じゃないだけ。言ったでしょ?自分の歌を作りたいって。それが難航しててねー…」


今は仕事をやめて歌を作っているということか。

俺には没頭してできる何かは喧嘩くらいだから、そこまでして何かに注ぎ込む感覚があまりわからない。


「私が今作ってるのは恋歌(ラブソング)なの。でもいまいちいい歌詞が思いつかなくて…」

「…彼氏とかいねぇの?」


言ってからハッと我に返るがもう遅い。

何を聞いてるんだよ俺は…!

そんなことどうだっていいだろ。こいつが曲を作ろうが作らないがそれもどうだっていい。


「彼氏はいないよ。だからこう…キュンキュンするエピソードがほしいんだよねぇ。あ、でもちょっと切ない感じもほしい!」

「はあ…」


オトに適当に相槌を打ちながら、グラデーションになっている空を見上げる。