家の前まで帰ってきてから、ふと机の中にスマホを忘れてきたことに気づき面倒だけどもう一度学校に戻ってくると誰もいない教室で花楓が自分の机の中を覗き込んでいた。


「…え、綿谷？帰ったんじゃ…」

「スマホ、忘れて戻ってきた」


思った通り、忘れられていたスマホを手に取る。


「…何してんの？探し物？」

「いや…そうだったんだけど、大丈夫！もう見つかったところ！それよりも、今日はたくさん話しかけてくれるんだね。どういう風の吹き回し？」


パッと笑顔になった花楓に少しデジャヴを感じながら、からかわれるようにして笑われ慌てて背を向ける。


「…別に。ただの気まぐれだ。なんでもないならもう行く」

「そう。久しぶりに綿谷とたくさん話せて嬉しいよ。また気分がいい時はいつでも話しかけてね」


逃げるようにして教室を出てから、もう一度教室を振り返ると花楓は背を向けて俯いていてその表情はよく見えなかった。

…気のせいだろうか。なんとなく、いつもの花楓らしくなかったような気がしたけど、俺は今の花楓をよく知らないからきっと気のせいだろう。

少し気になったけど、踵を返して廊下を歩いていく。