「なんか、花楓の鞄につけてたキーホルダーがなくなったらしいよー」

「朝まではあったのに…」

「どっかに落としてきたんじゃない?…それともまさか、誰かが取ったとでも言いたいのー?」

「え、ち、ちが…」


花楓がよく一緒にいる四人組グループの一人、原田瑠璃(はらだるり)の一言でクラスメイトたちがざわっと騒ぎ始めた。


「おいおい、勘弁してくれよ。ただのキーホルダーだろ?他人のものなんて取るわけねぇだろ」

「花楓ちゃんの勘違い…とかじゃないの?」


不穏な空気を漂わせてきたクラスメイトに、花楓がぱっと笑顔を作って明るい声を上げた。


「…ごめん!金具が緩くて朝に外してきたの忘れてた!本当、お騒がせしました!みんなのこと結果的に疑ったみたいになっちゃって嫌な思いさせてごめん!」

「あ、いや、勘違いだったならまあ…」


徐々にいつも通りの空気を取り戻してきたクラスメイトたちに、花楓はぺこぺこと頭を下げて回っていた。

そんな後ろでは花楓の友達である三人、原田たちが薄く笑顔を浮かべているのを俺は見てしまった。



「…ん?何してんだ、花楓」