「でもさ、“慣れ”をそのままにしておくと、それはいつか“自分”になっちゃうんだよね。いくら変えたいと後悔しても、いつの間にか手遅れになっちゃうことだってある。そうなる前に少しずつ本当になりたい自分に変わっていく必要があるんだよ。たとえば私だったら、少しでも大人っぽく見えるように髪の毛を伸ばしたり、落ち着いた仕草を心がけたりしてるわけですよ。どう?年上のいい女感出てる?」
にっと無邪気に笑うオトは、とてもじゃないけど大人っぽい女性とはかけ離れていた。
「…それの何が楽しいんだよ。どうだっていいだろ。周りからどう思われようが、どうだっていい」
「ダメだよ、少年。どんなことでも、諦めたらそれでおしまい。願い事だって、願わなければ叶わないって言うでしょ?どんなに辛くて苦しくても、諦めることだけはしちゃダメ」
いきなり真剣な顔で俺を真っ直ぐに見つめてきたオトに、思わず視線を逸らしていた。
諦めたらダメ…?
そんなこと言われたって、俺はもうとっくの昔に諦めている。
周りの人も、俺自身のことも全部。
「私ね、昔から歌うことが大好きだったの。いつか自分の歌を作って世界中に届けることが私の夢。知識も何もないし、叶う見込みも少しもないけど、それでも夢を一度も諦めたことなんてない。いつか絶対叶うって信じてる」
「…馬鹿馬鹿しい。この世に“絶対”なんてねぇんだよ。信じたところでなんの意味もない」
“絶対”なんてない。
俺の母親が死んでしまったことが何よりもの証拠だ。
明日が当たり前にくるとは限らないように、絶対なんてこの世界には存在しない。
にっと無邪気に笑うオトは、とてもじゃないけど大人っぽい女性とはかけ離れていた。
「…それの何が楽しいんだよ。どうだっていいだろ。周りからどう思われようが、どうだっていい」
「ダメだよ、少年。どんなことでも、諦めたらそれでおしまい。願い事だって、願わなければ叶わないって言うでしょ?どんなに辛くて苦しくても、諦めることだけはしちゃダメ」
いきなり真剣な顔で俺を真っ直ぐに見つめてきたオトに、思わず視線を逸らしていた。
諦めたらダメ…?
そんなこと言われたって、俺はもうとっくの昔に諦めている。
周りの人も、俺自身のことも全部。
「私ね、昔から歌うことが大好きだったの。いつか自分の歌を作って世界中に届けることが私の夢。知識も何もないし、叶う見込みも少しもないけど、それでも夢を一度も諦めたことなんてない。いつか絶対叶うって信じてる」
「…馬鹿馬鹿しい。この世に“絶対”なんてねぇんだよ。信じたところでなんの意味もない」
“絶対”なんてない。
俺の母親が死んでしまったことが何よりもの証拠だ。
明日が当たり前にくるとは限らないように、絶対なんてこの世界には存在しない。



