「マスター！来たよー。いないのー？」

「おお？誰だ？客か？」


オトの掛け声で奥からヨタヨタと出てきたおじいさんに、オトがぱっと笑顔になる。


「マスター、久しぶり！オトだよ」

「おお？オトか。なんだい、久しぶりじゃねぇか」

「最近ちょっと忙しくてね。私はいつものコーヒーでお願いね！少年は何がいい？」


俺を無理矢理二人がけ席に座らせてきたオトをぎろりと睨みつけながら、「いらねぇ」と答える。


「じゃあマスター、少年にも同じので！」

「おい、いらねぇって言って…」

「コーヒー二つなー」


全く人の話を聞こうとしない二人にはぁとため息をつきながら、不機嫌に頬杖をつく。


「ねえねえ、少年。ここのコーヒー本当に美味しいんだよ！飲んだらきっと虜になるからね」

「…」

「他にも喫茶店は色々行ったけどやっぱりここが一番でさー。あ、少年はどっか行きつけの喫茶店とかって…」