言い返す気力にもならず、おじさんを軽蔑した眼差しで見下ろしていると、ふと周りから注目されていることに気づく。


「おいあれって…」

「怪物って噂の綿谷じゃん。やっぱやることクズだよなー…」

「こわ…」


チッと舌打ちして、ちょうど学校の最寄駅についた電車からおりて学校とは真反対の道を歩いていく。


馬鹿馬鹿しい。

勝手に好き勝手言っていればいい。

全部どうでもいいし興味もない。

イライラする。あいつらみんな、俺の何を知っているというのだ。


「あ、少年!また会ったね!」


黒い感情にまた今日も呑み込まれそうになっていた時だった。

突然、俯いていた視界に入り込んできた女の人に驚いて思わず足を止める。


「おまえ…」

「“おまえ”じゃなくて、オトだってば。昨日教えたでしょ?君は名前教えてくれなかったから、少年ね!」