「いろんなことあったね……」
「そうだよなぁ。でも確実に言えるのは、ひとりだったらここまでは来られなかったってことかな」
学校の帰り道、今日はなんだかまっすぐに帰れる気分じゃなくて……。電車を降りた駅の前の防波壁の上に座っている。
「それは私も同じ。先輩がいてくれたから、私ここまで来られた」
「俺はまさか、沙也が毎日の学校帰りに来てくれるとは思っていなかったな……」
「お邪魔だった?」
「いや、最初はびっくりしたけどさ、だんだんその時間が楽しみになった。そのうちに来られない日には何があったのか心配で仕方なくなったもんなぁ」
そう。私たちって、これまでが全てが上手くいって、いまこうして二人並んでいられるっ……ってわけじゃない。
いろいろな理由はあるけれど。でも、偶然出会ったのがこの二人だったから、ここまでやって来られた。
「さて、帰ろうか」
「私が今日は見送る。哲也先輩、先に帰って?」
「先輩呼ばわりするなって言っただろうに?」
怒っているような、恥ずかしそうな、そして嬉しそうな声が返ってくる。
「また明日ね」
「うん。じゃぁまた明日」
私は、彼が踏切を渡って見えなくなってしまうまで、その場でずっと手を振っていた。
そう、いろいろあったんだ……。ここまでの私たちには……。



