「し、しらなかった……」
「は……?」
「しらなかったっ……」
震える茹でダコのような顔が、
恐る恐るこちらを振り返った。
「ほんとに、俺のこと……? 頭良くて勉強教えてくれてイケメンな爽は、俺にとってヒーローみたいなだったから……」
「ばっ、いや、だから冗談だって。ごめんな、悪ふざけがすぎた。今日はもう帰って――」
「いつから好きだったの!? 俺のこと! 入学式で初めて会って、もう3カ月じゃん!」
「………っ、だから…!」
なんなんだ……
なんなんだその反応は。
満更でもないっていうのか?
というか俺は
弓月とどうなりたいんだ?
どの教科書で調べれば
答えが見つかる??
「なあ、いつから俺のこと好きだったの? 俺のことかわいい言ってたのって、バカにしてたんじゃなく本気で思って―――」
「あああもう忘れてくれ! 俺が悪かった……!」
言えない。
入学直後から
子犬のようにまとわり付き、
追試のたびに死んだ鮭と化し、
俺の言動に一喜一憂してくれる――
そんなお前が、
気付いたら心底かわいいと思ってたなんて。
「だから……冗談……と、言うことにして、くれ……今回は」
「今回!? じゃあ次回もあるの!?」
「それは、その………ええとだな……やっぱ、それも……また次回に……」
「えええええ!! なんだよそれー!!? 次回ってなんだよー!!」
それ絶対俺のこと好きだろ!!と、
謎の自信に満ちた弓月に、
俺は教科書で
顔を隠すことしかできなかった。
騒ぐ弓月を
無理矢理追い出した後。
俺は床を転がりながら一人ぼやく。
「次回こそ⋯⋯次回こそ、ちゃんと伝えろよ、俺⋯⋯!」
感情って残酷だ。
こんなに愛おしいと
思い始めたら、
ブレーキがあっても止められないじゃないか。
『また次回⋯?』おわり

