======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

南出良(みなみでりょう)・・・転校生。千香乃と同じクラス。
片山継男・・・一輪車大会で、悦子と争った。今はカレシ。
物部一朗太・・・喫茶店アテロゴのマスター。満百合の父。
藤堂所縁・・・健太郎達の小学校教師。部活ではないが、ミラクル9の顧問を名乗っている。
木村敏也・・・春田病院精神科医師。

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==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

午後3時半。喫茶店アテロゴ。
雪が降ってきて、健太郎達は、公園から避難してきた。
すると、いきなりマスターの物部が声を掛けてきた。
「皆、この子を見かけなかったか?」
物部は、スマホを女性客の1人から預かり、健太郎達に見せた。
健太郎は言った。「公園にはいなかったよ、マスター。」
おさむは言った。「迷子なら・・・この前、防犯カメラ、増設したんだよね。」
先日、迷子が健太郎達に付いて来たのだが、母親は低血糖で病院に搬送されていた。
以来、寄付が沢山集まり、モールに防犯カメラが増設され、モール南入口の交番、南側の不動産屋事務所、そして、アテロゴで監視出来るようになった。
警備会社と違って、常時見張っている訳ではない。モールと提携している警備会社は「定期巡回」だけだ。
物部は、店を辰巳達に任せ、奥の部屋で、記録映像を24時間前から再生した。
「あ。大変だ。」物部が叫んだのは、子供が、あの女性の子供が連れ去られようとして逃げた映像だ。どうやら、アテロゴの3軒奥から出入り出来る、第一駐車場のようだ。
いつの間にか背後に立っていた、おさむと健太郎がいた。
「マスター。警察に連絡を。俺達、駐車場に行ってみる。」
「了解した。」マスターの力強い言葉に、健太郎達は店を出て、駐車場に向かった。
「手分けしよう。おさむ達は3階、継男達は1階を頼む。」と、健太郎はリーダーらしく即断した。
「オッケー!!」
目を細めて注意深く各車の内外を確認していく、健太郎達。
ふいに、健太郎のスマホが鳴動した。
3階に行った、悦子からだ。
「健太郎君、あの子、車の下にいたわ。今、満百合がマスターに連絡してる。」
「了解。」健太郎は、スマホのLinenを起動し、皆に語りかけた。
午後5時。継男の母が勤める病院。
検査を終えた木村医師は、母嫌の神地菊江に言った。
「擦り傷は一杯あるけど、骨折も出血もない。ただ、PTSDになる可能性があります。」
母親は、何度も何度も医師に礼を言っていた。
「救急で診て貰った先生は、精神科の先生だ。きっと良くなるよ。」と、継男が言った。
午後8時。丸髷署。生活安全課。
「お手柄だな、ミラクル9。那珂国の『臓器売買グループ』だ。今、非常線を張った。一時期衰退していたが、また流行だしたか。」
「父さん。もし誘拐されていたら、どうなったの?」
「単なる身の代金誘拐なら、対処することは出来るが、子供の内臓を取り出して売られた後の体の部分は、『生ゴミ』で捨てられる。あ。女子には、キツかったかな、表現。」
ミラクル9女子は、」満百合、未玖、みどり、千香乃、悦子、めぐみのことだ。
皆、吐きそうな、泣きそうな顔をしていた。
「あの子、すばしこいから助かったのね。」めぐみが、気を取り直して愛宕に言った。
「ああ、恐かっただろうな。幼い子から目を離すな、って、半世紀以上も前から言われて来たことなのにな。」と、愛宕警部は溜息をついた。
「明日、かあちゃんが記者会見で注意を促すって言っていたよ、おじさん。」
愛宕は、頷いた。
健太郎の母あつこは、警視正。
重要な犯罪には、責任者に抜擢されることが多い。
「あの時、カメラ増設して良かったね。」悦司が言うと、「うん。あちこちで、あの少女を探している奴らの顔が映っている。」と、愛宕は応えた。
「じゃ、ミラクル9。解散、帰宅せよ。」声の主は、藤堂だった。
「先生。いいとこ取りね。」と、みどりが皮肉を言うと、「顧問だからいいのだ。」と、藤堂は開き直り、皆は警察署を出た。
翌日。午前9時。警視庁。
あつこは、記者会見で堂々と言い放った。
「子供は宝です。売買してはならない宝です。国籍民族年齢性別、関係ありません。普遍的事実です。被疑者は極刑に処すべき。反論する者擁護する者は同罪です。」
―完―