======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 南出良(みなみでりょう)・・・転校生。千香乃と同じクラス。
 片山継男・・・一輪車大会で、悦子と争った。今はカレシ。

 鈴木栄太・・・小学校校長。
 藤堂所縁・・・小学校教師。自称ミラクル9の顧問。
 物部一朗太・・・喫茶店アテロゴのマスター。満百合の父。
 池上葉子・・・池上病院院長。
 真中瞳・・・池上病院看護師長。
 愛宕寛治・・・悦司の父。物部一朗太の後輩。

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 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ※金魚の糞とは、切れずに長くつながっているさま。大勢の人が、一人の人物にぞろぞろとついて回るさまなどにいう。金魚のうんこ。
 ※低血糖症状とは、血糖値が下がり、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状ですが、重度の低血糖では、錯乱、けいれん発作、昏睡(こんすい)などの症状がみられます。

 午後3時半。喫茶店アテロゴ。
 雨が降ってきた為、ミラクル9は、ぞろぞろとやって来た。
 「あれ?健太郎。その子、どうした?」
 「え?」健太郎が後ろを振り返ると、3歳児くらいの女の子がいる。
 「知らない。君、お母さんは?」その子はきょとんとしている。
 栞が改めて尋ねた。「お母さんは?」
 「マスター。シネコンじゃない?今日もアニメやってるし。」継男が発言した。
 悦子にいいかっこしたいのだろう。
 ミラクル9は、揃ってシネコンに行こうとしたが、「待って。近所のお店かも知れないよ。健太郎、手分けしようよ。」と、おさむが言った。
 「それもそうだな。マスター、モール内放送って使える?」
 「分かった。不動産屋に頼もう。お前達は、なかなか見つからないようなら、ここに戻れ。」
 マスターの物部は電話の受話器を取った。
 健太郎、悦司、満百合、みどり、めぐみはシネコンに向かい、迷子の子を連れて行って、従業員に迷子になった子供を探している親がいないかどうか、館内放送をして貰った。
 おさむ、千香乃、良、悦子、未玖、継男はアテロゴの隣から順に、おさむが撮影したスマホの社員を各店のスタッフに見せ、尋ねて回った。
 成果は上がらなかった。それで、皆、アテロゴに戻って来た。
 いつの間にか、客席は満席だった。雨のせいだろう。
 「皆さん、この子、どこかで見かけませんでしたか?」
 物部は、客に、その子を見せた。
 皆、かぶりを振った。
 「不動産屋から交番に電話して貰ったよ。」
 その言葉を裏付けるように、交番の巡査と愛宕警部が店の入り口に立っていた。
 「健太郎君、この子、手ぶらだったのかい?」
 「はい。手ぶらでした。何か身元が分かりそうなもの持って無いか、満百合達に調べて貰ったけど。」
 「分かった。マスター。一旦、交番に連れて行きます。今、署から少年課の女性警察官が交番に向かってますから。後で、探しに来るかも知れないから、よろしくお願いいたします。」
 「了解。」
 ぞろぞろと、愛宕達と健太郎達が出て行った。
 「まるで、『金魚のフン』ね。あ、そうか。満百合達がぞろぞろ列を作って移動するのを見て、ついて来ちゃったのね。」と、栞が言った。
 「ママさん、『金魚のフン』って、何ですか?」と、女性客の1人が質問した。
 栞は、要領よく説明した。「今は、死語かな?昔はよく使ってたけど。」
 「ミラクル9は、いつも一緒ですからね。」と、泰子が言い、「そうそう。正に『金魚のフン』。あ。満百合ちゃんに失礼ね、って怒られるかな?」と辰巳が戯けて言った。
 「事件とか事故でなければいいがな。」
 「あ。」と、男性客の1人が叫んだ。
 「マスター。モールの『横出口』に救急車止まってましたよ。ひょっとしたら、ひょっとして・・・。」
 「分かった。」と言うが早いか、物部は愛宕に電話をした。
 「なるほど。救急センターに問い合わせてみます。」
 午後5時。救急病院の池上病院。ある病室。
 母親の側にいる、迷子の女の子。「お母さん。」「八重子。」
 「じゃあ、この子とはぐれた後、症状が出たのね。『低血糖症状』と言ってね、糖尿病の人はもちろん、慢性的に腎臓が悪い人、高齢者なども低血糖になりやすいの。糖質を過剰に摂取する人、糖質制限をしている人、激しい運動を長時間している人なども当てはまるわ。」と、院長は言った。
 看護師長の真中が院長にタブレットを渡した。
 「患者の松田祐子さんは、腎臓の持病があるのね。目を離した隙に、娘の八重ちゃんが健太郎君達について行ってしまい、探そうと必死で走ったせいで、症状が出た。たまたま通りがかったモールのお客が119番して、救急車を呼んだって訳。おさむ君、君たち、また活躍したのね。やっぱりね。所持品から、ご主人に連絡したから、その内到着するでしょう。」
 入って来た、高遠学に、院長はポンと肩を叩いた。
 「じゃ、皆、帰ろうか。皆の家には連絡しておいたよ。アテロゴにもね。」

 皆が病室を出て、ロビーに行くと、鈴木校長と藤堂が待っていた。
 健太郎が代表して、報告をした。
 「ご苦労様。モールでは、防犯カメラを増やすことにしたらしい。良からぬ人間の監視だけではなく、迷子予防の為にも必要だからね。」
 「校長先生が、言ってくれたんですか?」と、悦司が尋ねた。
 「ん?・・・大した推理力だね。」
 悦司の父、愛宕警部からだと『圧力』と受け取る人もいるから、愛宕は校長に依頼したのだった。
 皆、出口に向かった。『金魚のフン』のように。
 ―完―