======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 藤堂所縁(ゆかり)・・・健太郎の担任。ミラクル9の顧問。
 鈴木栄太・・・小学校校長。
 宮前悦子・・・小学校教師。
 物部一朗太・・・喫茶「アテロゴ」マスター。満百合の父。

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 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※クラス(学級)においては、教科外の教育活動に取り組む時間があります。これを小学校や中学校では「学級活動」、高校では「ホームルーム活動」と呼びます。日本では、学級活動は教育課程の一部。ゲームをしたり、食育に関する話し合いをしたり、学校やクラスによって内容は様々です。
 学級活動で何をするか、といった内容については、文部科学省が2008年(平成20年)改定の学習指導要領に定めています。公立・国立・私立のすべての小学校や中学校の教員がこれに準じて指導案を作成しています。改訂された規定には「人間関係」というキーワードが加わり、「食育」や「勤労」の観点を育むことも重視されるようになりました。

 午後4時。モール。喫茶店アテロゴ。
 藤堂とミラクル9は、ゲリラ豪雨の為、野球の練習を止め、避難してきた。
 「しちごさん?」物部が素っ頓狂な声を出した。
 「新任の先生でね、めぐみのクラスなんだけど、『しちごさんに賛成の人と反対の人に別れて議論しましょう』って、『学級活動』で言ったらしいんだ。その前に、七五三に行ったことのある人、無い人のアンケートを採ったらしい。」と、おさむが説明した。
 「ウチは3回とも行ったけどね、満百合、写真見ただろ?」「見た。」
 物部親子の会話に、「3回は多いわねえ。まあ、気持ちの問題だけど。」と、藤堂は応えた。
 「え?そうなんですか?」と、物部の前に栞が尋ねた。
 「そう。延べ2回が普通です。5歳が男の子、7歳が女の子、3歳が両方。平安時代に宮中で行われていた儀式の名残だそうです。」と、藤堂はスラスラと言った。
 「先生、詳しいですね。」と健太郎がからかったので、「健太郎君は、後で『個別指導』ね。これでも教師なんですけどね。」と、藤堂は、口を膨らませた。
 「変な議論ね。行ったことあるかどうかとか、回数とかなら判るけど。」と、栞は腕を組んだ。
 「それでね、大げんかになっちゃたの。行かなかった人や行けなかった人もあるし。そういう子は、反対するに決まってるでしょ。想い出がないから。」と、めぐみは言った。
 「その先生は、喧嘩させたかったのかな?行かなかった人は何人いるの?」と辰巳が口を挟んだ。
 「3分の2。だから、反対派の方が多かった。泣き出す子もいたよ。」
 「ウチは3回とも行かなかったな。両親とも警察官だし。」と健太郎が言った。
 「右に同じ。先生は、もう知ってるから言うけど、EITOは、僕らが生まれる前からずっとテロ組織と闘っている。泣きながらごめんなさいって言う母さんに、行きたいなんて言えなかった。」と、悦司は言った。
 「僕は、5歳の時、父さんと行っただけ。3歳の時、おばあちゃんが連れて行ってくれたけど、忙しいのは、右に同じ。」と、おさむは言った。
 「今の若い子は常識ないわね。明日、いや、今、校長先生に報告するわ。」
 藤堂はスマホで鈴木校長に電話をかけ、スピーカーをオンにした。
 「明日、宮前先生に話してみます。みんなは、直接言っちゃだめだよ。でも、悩んでいる子がいたら、力になってあげて。」
 翌日。午後3時半。
 ミラクル9は、昨日の豪雨と強風で飛んできた葉っぱの掃除をしていた。
 そこへ、鈴木校長と宮前先生がやって来た。
 「先生が命令したんですか?掃除。」と、宮前先生は眼を三角にして言った。
 「いいえ。ボランティアです。僕ら毎日のように野球やったりドローン飛ばしたりしているし、掃除の仕方慣れてるから。」と、健太郎が代表して言った。
 「先生は、子供に喧嘩させる為に先生になったんですか?違いますよね。生意気なことを言います。議論は大切だけど、対決させて多数派に勝たせるのは、マスコミや政治家のやることです。賛成反対を意思表示した後、じゃあ、どうすべきか、って考える時間をくれれば、皆も勉強になったと思います。」
 「多数派だけが威張ったり、少数派で多数派を押しつぶしたり・・・それは民主主義じゃないと思います。」と、おさむが健太郎に加勢した。
 「肉体的にも精神的にもまだ『子供』です。でも、後7年経ったら、『大人扱い』なんですよね。学校出たら、みんな戦争に行くんですか?違いますよね。」
 悦司は、涙目で訴えた。
 きっと睨んだ宮前に藤堂は言った。
 「上位にある者だけが正論。そんな教え方したら、みんな悪い大人になってしまうわ。」
 考え込んだ宮前に、「私たちだって、教えられることがあります。このミラクル9のメンバーだけが特別じゃない。さっきあなたは『命令したのか?』と尋ねられた。命令しないと人を動かせないのですか?人間はロボットじゃないですよ。」と校長は言った。
 次の日。宮前先生は『転勤』された、と副校長は朝礼で話した。
 本当は、退職したのだということをミラクル9は藤堂に教えられた。
 めぐみは、クラスの皆が、『なかったことにした』ことを皆に伝えた。
 ―完―