アーリータイムズ

 大切にしたいと思えば思うほど、何故か傷つけてしまう。灯の気持ちを知りたいと思えば思うほど、わからなくなっていく。
 俺はどうしようもない迷路にハマってしまった様に途方に暮れていた。

 「ごめん、、、言い過ぎた。俺が悪かった」

俺が謝っても、手遅れのように灯の瞳は冷たいままだった。昔は簡単に喧嘩の仲直りが出来たのに、今は完全に仲直りが出来ないまま、傷跡を残したままだった。灯が辛そうな、顔をして自分の手を眺めていた。
 俺はそれでも、どうにかして、灯と一緒にいたい。灯とこれからも、未来を歩いて行きたいと願っていた。

 「灯、ほら出張で海外行っただろ?灯にお土産買ってきたんだよ」

俺はそう言って、海外の高級ブランドの包みを渡した。秘書に頼んで灯用に買ってきてもらったネックレスだった。灯はその包みを見ると、何故か瞳に沢山の涙を溢れさせた。

 「、、、こんなのいらないよ」

灯がそんな事を言うので、俺は胸の奥からまたムカムカした気持ちが込み上げていた。

 「何でそんな事言うんだよ、せっかく、、、」

俺が言い終わらないうちに、灯はプレゼントの包みを投げつけた。

 「私がこんなプレゼントで、喜ぶと本気で思ってるの?今の喧嘩がこれで帳消しになるって、そう思ってる?昔は違ったよね?安くてもちゃんと気持ちの籠ったプレゼントをくれたよね?こんな高いだけのプレゼント、私はいらないよ!もう帰るから、これ以上一緒にはいられない!」

「じゃあどうしろっていうんだよ!!俺達高校生のままじゃいられないだろ?いつまでも昔みたいにはいられない、変わっていくしかないんだよ!」

灯の目から絶え間なく涙が溢れていた。俺は変わってしまった。いつのまにか、灯が愛してくれた俺ではなくなってしまったのかもしれない。
灯は何も言わないまま、静かに俺のマンションを出て行ったが、追いかける事もしなかった。
 俺は暫くの間、一人で頭を抱えていた。なんだかもの凄く疲れていた。最近忙し過ぎて疲れていた事もあったが、頭の中でくるくると回っていたのは、灯の辛そうな泣き顔だった。
 あんな顔をさせる為に俺は灯と恋人でいるわけではない。わかっているのに、灯を笑顔にする方法が全く思い浮かばなかった。

 ふと、テーブルを見るとテーブルの上に俺のマンションの鍵がつけられたミイラ男のキーホルダーが置いてあった。
こんな昔にあげたガシャポンを、今だに灯は大切に持っていたんだ。あの、クリスマスの日灯はこのミイラ男をあげただけで、もの凄く幸せそうな顔をして喜んでいた。

 胸が痛くて苦しかった、一日でいいから、あの頃の二人に戻りたかった────